アンデットな村人の僕 8
猟師のドナトの一人娘、赤髪のイルダに村の子がついてきた。
「おい、イルダ。その子を猟師にするんか?」
「うるさいな、行くよ!」
イルダが男の子の手をひいて草むらを鎌で刈りながら歩いて行く。
「親父、あれはどこの子だ?」
「雑貨屋の子のタケルだ。火薬玉を仕入れてもらったから、見物させてくれって頼まれてな。それよりイルダの話だと村の悪ガキどもがついて来る話をしてたから、そろそろ日が暮れる前に追い返せ」
ドナトの親父が怒鳴り散らすほうが、ガキどもはびびると思うけどな。
「わあっ、見つかった、逃げろっ!」
つかまえた涙目のガキの頭を軽く小突いて逃がしてやる。
「またついてきたら、こんなもんじゃねぇぞ、ゴラァ!」
まあ、ガキのうちは大人のやることがなんでも気になるもんだからな。
まさか大人になって猟師になってガキを怒鳴るとは思わなかったけどな。
すっかり日が暮れると、ドナトおじさんのたき火のまわり以外は真っ暗だ。
「イルダはここでたき火の見張りだ。雑貨屋のぼうずもな。この火をめざしてみんな帰ってくるから、とても大事な役目だ」
「はい!」
「ぼうず、いい返事だ。イルダ?」
「はい!」
イルダが僕のまねをして大きな声で返事をして、ぺろっと舌を出して笑う。
「ここからでも火薬玉が爆発する音とか聞こえるしよく見てれば光るのも見えるよ」
イルダが僕に小声で言った。
僕たちは猟師さんたちが歩いていくランプの明かりを、黙って見つめていた。
真っ暗でとても静かでこわかった。
「ねぇ、イルダ」
僕が声をかけたとき、イルダが唇の前で指を立て黙らせると、闇のむこうを指さした。
一瞬、チカッと何かが光った。
ドン、と地面が震えた。離れているのに音が響いてきた。
爆発音がそのあとしばらく続いた。
「爆発したわね」
イルダがつぶやいた。
猟師さんたちは岩山の洞窟の入口に運んでいった火薬玉を投げ込んだそうだ。
洞窟を巣にしていたオオカミがいたらしい。
「オオカミは群れで動くから、一人でいるとき囲まれたら、猟師でもやばい。だから、巣を見つけたらつぶしておくんだよ」
僕とイルダはしばらく日がたってから爆発した巣を昼間、二人で見に行った。
洞窟の岩山が崩れてふさがっていた。
タケルはじっと崩れた穴を見ていて、急に泣き始めた。あたしはどうしたのと聞いてみた。
「かわいそう」
タケルは猟師にはなれないと思った。
こわいけどオオカミがうなって噛みついてくるのを弓矢で必死に射ったことがあるあたしは、オオカミをかわいそうとは思えないけど。
「タケル、オオカミはもっと村から離れた森に、人のいないところに巣を作ればよかった。でも、村にオオカミが人を襲いに来たら、タケルはあたしを守ってくれる?」
10歳のタケルは涙をふいて顔を上げた。
「がんばる!」
あたしはタケルの手をひいて夕方に村に帰った。
火薬玉より大きな爆発。
僕には想像がつかない。
「お師匠様、制御って誰がどうするんですか?」
「ぼうやが自分で制御できるようにする。アデル、魔法を使うとき魔力を感じるっていう基礎は忘れてないわよね」
「はい。どんな効果があらわれるか思い浮かべるのと、あと、生命力が魔力になるときに、火、水、風、土、金属、どれかをイメージするか、呪文や魔法具で属性を導く……」