アンデットな村人の僕 1
村人。
村に暮らしていて、自然の恵みの恩恵で贅沢はできないがそれなりに暮らしている。
たまに自然の厳しさで命の危険にさらされる。
「うわっ!」
足首に蛇が咬みついていた。
見たことのない蛇だった。
真っ白で丸い頭でやたらふくらんだ胴体が短く尻尾がちょろりとついている。
あわてて足を思いっきりふってみるがまったく離れない。
薬草を手に握ったまま目の前が暗くなっていく。
あ、毒でもあったのかな……。
そう思いながら尻もちをついてその場に座りこみ、まだ咬みついているつぶらな瞳のぶさいくな蛇を薄れゆく意識の中で見続けていたんだ。
翌日、少年の遺体が森の中で発見された。
猟師が遺体を森から少年の家に運んできた。
「ああ、こんなことなら、薬草でもとってこいなんて森に行かせなきゃよかった」
母親がそういって冷たくなった少年の手を握って、ベットのそばでしゃがんで泣いていた。
その隣で父親が立って息子の眠っているような死に顔を見つめている。
まだ十五歳だぞ。
少年の父親が唇を噛みしめて涙をこらえている。妻が悲しみ泣き崩れているのに自分まで泣きじゃくるわけにはいかない。
遺体を発見して運んできた猟師が、軽く頭を下げて少年の家を出ると村はずれの教会に向かった。
「えっ、わかりました」
教会に駐在している若いシスターは猟師から話を聞いて少年を弔うべく、猟師と少年の家に向かった。
「では、お父様、お母様、教会にて祈りを捧げ息子さんの体を聖水で拭き清め、明日のお別れのときまで、息子さんを教会でおあずかりいたします」
父親は少年の遺体を抱えて教会の祭壇まで運んだ。
そのあと日が暮れるまで教会の裏手に、シスターから銀貨三枚を受け取り、少年を埋葬する墓穴を泣きながら掘って妻の待つ村へ帰っていった。
その夜、シスターは森の中で発見されたときのままの姿の少年の髪を涙ぐみながら撫でた。
私がしっかりしなくちゃ、タケルくんが天国に召されるようにしてあげなくちゃね。
シスターのアデルは年下の弟のように思っていた少年が、薬草摘みに行く前にやってきたのを思い出して目に涙をためながら、儀式のために、少年の衣服を全部脱がせた。
冷たくなった少年の体を聖水の染み込んだタオルで頬から拭き清めていく。
足首には咬まれた傷痕が生々しく残っている。
シスターのアデルがその傷痕を拭いて、包帯を巻いて隠したときだった。
「えええっ?!」
仰向けに祭壇に安置された少年の股間のものが、むくむくと勃起していくのを、アデルは見た。
死後硬直で腕が曲がったり、逆に弛緩して口が開いていく遺体があることを、まだ若いシスターのアデルでも知っていたが、勃起する遺体があるとは聞いたこともない。
ふ、拭き清めなくちゃ。
動揺しつつシスターのアデルは少年の勃起したものに手を添えて、そっと撫でるように聖水をふくんだタオルで拭き始めた。
なんか気持ちいいぞ。
少年タケルがそう感じて薄目で見たとき、股間を拭いているアデルの横顔がぼんやりと見えた。