アンデットな村人の僕 18
「イルダとは同郷の幼なじみです」
「あたしの弟みたいな感じだよ」
イルダが昔と変わらない感じで僕の頭を撫でた。
「リドリーは私のペット……」
「わん! ってなんでだよ、ミハル、ひでぇ」
「リドリーとミハルは夫婦なんだよ」
イルダが説明してくれた。
「タケル様と私は契約によって結ばれています」
「タケル、結婚でもしたのか?」
「そうじゃないんだけど」
「ソレイユさんは偉大なるエルフ族の精霊ですよ。そして、タケルさんは精霊使いだということです」
ロミルダさんがすかさず説明してくれた。
「なるほどね、すごいわね」
ぽつりとミハルがつぶやいた。
俺とイルダは首をかしげて顔を見合わせた。
精霊ってなんだ?
どこかのお嬢様にしか見えないんだが。
「イルダとリドリーには、出発までには、私から説明しておきます。ロミルダ様」
ミハルの言葉にロミルダがうなずく。
(あー、あぶなかった、ロミルダ様の魔法学の講義が始まるところだったわ)
ミハルはほっと胸をなで下ろした。
「ここにいる者たちは、精霊使いのタケルさんや神聖魔法術師のアデルさんとは系統が異なりますが、私をふくめ騎士団の中で魔法力を使う数少ない者たちとなります」
(すごいな、イルダも魔法を?)
僕がイルダの顔をちらっと見ると、おっ、なんだ?という顔をされて目をそらした。
(タケルのやつめ、いちおう魔法ぐらい、得意じゃないけど使えるようになったのを不思議そうな顔しやがって)
「リドリーは正確には魔力のある武器や防具を装備しても使いこなせるということで、知識はなくや呪文の詠唱はできません。イルダは自分の俊敏さを高める魔法を身につけていて、やはり知識はなく呪文の詠唱はできません」
騎士団総長ロミルダが二人に説明した。
私は武術系統の魔法があるとお師匠様から聞いたことはあるけれど、習ったことがないので騎士のリドリーさんとスカウトのイルダさんを、すごいと思って見つめていた。
「お二人ともすごいですね」
リドリーとイルダはアデルさんにそう言われて、まんざらでもない顔になっている。
(アデルさんだってコツをつかめばすぐに使えるようになると思うけど)
とミハルは思っていた。
「ミハルは、魔法学の知識があります」
「お二人に会えて光栄です。魔法についてまだまだ知識不足ですのでいろいろと教えて下さいませ」
タケルくんと私はそう言われて「こちらこそ、ぜひ、よろしくお願いします」と頭を下げた。
(サンドイッチを食べる精霊なんて、どうやって召喚できるのか、ぜひ聞いておかないと)
ミハルが熱い視線で精霊使いのタケルを見つめているのにリドリーは気づいた。
(気の毒だが少年よ。ミハルの魔法談義につきあってやってくれよ)
と同情していた。
「残念ですが、現在の騎士団の人材で魔法の素質を持つ者は減少していて、あとは隊長格の騎士たちぐらいが魔法を使うぐらいです」