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アンデットな村人の僕
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アンデットな村人の僕 13


アデルがソレイユを支えて床に座らせる。
「お父様……」
両手で顔をおおいソレイユが肩を震わせ泣き出す。
ルイーズさんは立ち上がると、ソレイユの頭を優しく撫でた。

ソレイユの再生した肉体には、もう一人、ソレイユの父さんの命がちょっぴり残っていたらしい。

「ぼうやのおかげで、呪われた魔導書からあなたを解放できたわ。これからは、自由に生きなさい。ぼうやに仕えるもよし、この人間の世界を見てまわるもよし」

お師匠様がタケルくんに魔導書を与えたのは、封印されたエルフ族のこの子を解放させたかったのかもしれない。

ルイーズさんによると、エルフ族の信心深い王と王女が姿を消したあと、配下のエルフ族の領主たちによる統治の時代があったらしい。

その後の領土争いの戦乱の時代で人間もエルフ族も減少した。エルフ族の生き残りは統治を放棄し、死ぬまで眠り続ける自殺のような眠りについた。
そのために魔法の技術はかなり失われた。

「エルフ族の王の書」と呼ばれる魔導書を単純に古代の魔法技術について記された書物と思った先人たちは、封印されたものを召喚しようとして失敗。制裁を受けた。

ドラゴンよりすごい何かを召喚して従わせようとしたらしい。

「ちゃんと読めば王と王女の命が封印されているってわかるわ。召喚させるのに必要な魔力を持つ核石は、私の知る限りなかった。ぼうやの核石が、ぼうやの命を維持するだけの力を残して力を使い果たしてくれたらよかったんだけど」


ぼうやの核石(コア)に貯められた力をほぼ全部放出させることで活動を休止させ、ぼうやの生命維持はアデルの回復魔法でなんとかするつもりだったけれど、古代の魔導書に封じられていた精霊を具現化しても、ぼうやの核石は余力がある。

古代のエルフ族は寿命がある肉体を捨て、魔導書に自らの人格と記憶を宿らせる技術力があった。
ある意味では不老不死を実現していた。
しかし魔導書を正確に理解し、再び肉体を具現化できる者がいなかったのだ。
古代エルフ族のぬけがらの肉体は朽ち果て塵となっている。
人格と記憶を人は肉体の死により失う。
しかし、新たな肉体に乗り換えて人格と記憶を維持できれば見た目は変わっても同じ者ではないか。

ぼうやは古代エルフの王族の姫であり巫女でもあるソレイユという少女を復活させた。
老いていく肉体を捨て、新たな若い少女や乙女の肉体を、それも容姿や体つきは自分の望む理想のままに得られると知ったら、需要はかなりあるはず。

精霊化と肉体再生の仕組みは興味は尽きないけれど完全に死んだ者を蘇生するわけではなく、精霊化してその後、肉体を具現化されなければ魔法具の中に封じられる。
魔法具が破壊されるまで閉じ込められているため永遠の監獄といった感じもする。


魔導書に宿っていた古代の姫巫女ソレイユとエルフ王は、精霊化して融合していた。
ぼうやの命令でアデルに似た服を自分で作り出してみせたけれど、その魔力の源はぼうやの核石と思われる。

「タケル様、私たちはまた本の中に戻ります。必要であれば召喚して下さいませ。では……」

ソレイユは僕に頭を下げたあと姿を消した。

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