花嫁サークル!! 96
「そうです。本来、ミーティングは悠様には非公開でなければなりません。何故なら、サプライズ要素が含まれているからです。そのため、ホームページの『活動計画・提案』の項目はパスワードがないと閲覧できません」
悠はクリックしたことがないのでその事実はしらなかった。
しかし、たとえクリックしたことがあっても見れなかったということだ。
今更ながら補足しておくが、ホームページは検索エンジンではヒットしないように設定されている。
URLをダイレクトに入力して初めて繋がるのだ。
つまり先程のパスワードは、本当に悠が見れないようにするためだけに設置されているのである。
「しかし、今回悠様にも参加していただいたのには、出店するにあたって大きな問題があったからです」
「……な、なに?」
神妙な面持ちで言うルナを前に、悠に緊張感が生まれた。
「……『メイド喫茶』ですよ?」
「う、うん……」
「悠様は、お嫁さんになるかもしれない人のコスプレ姿を……メイドの姿を、他の男に見られて何も思わないのですか?!」
「………………はい?」
彼が眼鏡をかけていたら、きっとズレていただろう。
急速な脱力感に襲われ、彼は椅子に浅く掛け直した。
(……ん?)
どことなくチクチクした物を感じる悠。
サークルメンバーの痛すぎる視線だ。
慌てて居直った悠は
「そ、そんなわけないだろっ」
と口走っていた。
言った後に違和感を覚える。
悠は柔らかくなっていくメンバーの顔を見渡しながら、その正体に気付いた。
(紗耶……?)
そう。
紗耶までもが、悠の返答を気にしていたのだ。
彼女は体を重ねたいがためにサークルに入った、と悠は認識している。
その彼女が、他のメンバーと同じ様に悠へ視線を向けていたのだ。
(………………)
「しかし、サークルの財政が厳しいのも事実です」
ルナの話が再開され、彼は紗耶のことを一旦頭の片隅へ置くことにした。
「そこで、悠様の許可が必要なのです」
もっともらしいが、実際はどうなのだろう。
乙女心は複雑である。
「そこで、悠様を頷かせるだけの対策を練りました。里奈」
「はいっ、なのです」
脇に逸れたルナに代わり、里奈が黒板の前に出た。
彼女はスケッチブックをパラパラやると、一枚の絵を掲げる。
「アンケートの集計結果から、メイド服のデザインはこれでいくのです。ちなみに、イラストを描いてくれたのは美鈴なのですっ」
拍手が沸き起こる。
「純華先輩の知り合いのデザイナーに掛け合った結果、実現可能とのことなのです」
黒を基調にして白いレースがあしらわれた、一般的に認識されているデザインだ。
スカートには裾から白いラインが3本、5センチ間隔で入っている。