花嫁サークル!! 92
既に日は高くなっていた。
昨夜、ルナは何とか自力で帰ったものの、純華は涼子の肩を借りて車まで引きずられていったようだ。
そして二人が悠のところへ訪れた頃には、彼は起きて洗濯物を干し終えたところだった。
「すみませんっ」
と口々に言う彼女たちの言葉よりも、悠は二人の姿に目を丸くした。
「あ……あの、さ……」
「はい?」
「どうかなさったのですか?」
不思議そうな顔で悠を覗き込む彼女たち。
「なんで……制服着てるの?」
そう、二人とも学校の制服を身に纏っていたのだ。
ルナはもちろん自校の制服なわけだが、わざわざ誰かに借りたのか、純華も悠たちの高校の制服を着ている。
「説明いたします」
ルナが一歩前へ出た。
「私たちの担当週は学校がないため、四六時中悠様と一緒にいることが可能です。従って、スキンシップ可能な時間に不公平が生まれてしまうのです」
「はあ……」
納得したのかしていないのか、いかにももっともらしい口振りに彼は曖昧に頷いた。
「よって、残りの平日の日中は今まで通り登校していただきます」
「…………はい?」
悠は耳を疑った。
学校へ行っても授業など行われていない。
ただ場所が変わっただけで、暇な時間が溢れていることに違いはないのだ。
そうやって不思議に思っている悠を後目に、押し入れに仕舞われた制服を引っ張り出す二人。
「ささっ」
「お召しください」
「はいはい……」
彼女たちの怪しすぎる笑顔に冷や汗を流しながら、悠は制服に袖を通した。
で、学校に着いたわけだが……。
机は全て廊下に出されているため、椅子だけを室内に持ち込み、悠と純華がそれに掛ける。
ルナはあたかも教師のように黒板の前に立った。
「では、始めます」
ルナは黒板の脇のチョークを拾い上げた。
「え? 何を?」
と問う悠を他所に、彼女はカツカツと文字を書いていく。
そして黒板には仰々しく「メイド喫茶」という文字が残った。
「悠様もご存じの通り、今年の文化祭は有志団体の参加を認めています」
それは春の全校集会まで遡る。
今年は体育祭をなくす代わりに、文化祭が1日増えて3日間となった。
学力低下に苦しむ学校側に花音の代の生徒会が提案し、認められたのだ。
文化祭がより盛り上がるものにするために、毎年の部活団体による模擬店や発表会に加え、今年から有志の団体の参加を打ち出したのである。
規模は問わず、文化祭の一時的な集まりでも構わない。
しかし集まりすぎて収集がつかなくなると支障が出るため、登校日に行われる夏の学生集会の時に出店する有志団体の発表と投票を行うのだ。
票の多かった3団体が出店を認められ、様子見の今年の結果を来年以降の引き継ぎ資料として残す。
春の集会での説明は、要約すればこんな感じだ。