花嫁サークル!! 10
真っ白な印象を受ける美鈴さえ、今朝、彼の肉棒を口舌奉仕したという事実が悠の頭にフラッシュバックされる。
ちらりと美鈴を窺うも、直ぐに携帯に視線を落とした。
「『帰るまで我慢しろ』」
とだけ打つと、彼は送信ボタンを押した。
「帰ろう」
彼はスッと立ち上がった。
「はいっ!」
次いで美鈴も立ち上がる。
「家、こっちなの?」
悠と同じ方向に歩き出した美鈴に、彼が声をかけた。
「いえ、電車で5つ目の駅です」
方面は分からないが、とにかく電車通学ということはわかる。
「え? じゃあ何か用事?」
「今日の担当は私なので……」
彼女はそれっきり視線を下げ、押し黙ってしまった。
────────
(担当、か……)
台所に立つ美鈴の後ろ姿を見ながら、悠はその意味を解していた。
つまり、日替わりで彼の世話をしてくれるのだ。
“日替わり彼女”というと言葉は悪いが、日替わりで担当を持つということは、その日は確実に自分をアピールできるということなのだ。
悠は花嫁選考サークルのHPを眺め、自分の解釈を確信に変えた。
昨日誰も来なかったのは、サークルが承認されたことによってミーティングが行われていたかららしい。
ビニール袋をガサガサしながら食材を取り出す美鈴。
あれは、帰りに寄ったスーパーで買ったものだ。
次第に、芳ばしい匂いが鼻腔をくすぐり始める。
フライパンで肉を焼く音も、どれも悠には久しいものであった。
軈て食材がテーブルに並べられた。
今朝と違って、今回はちゃんと二人分ある。
炊飯器持ってて良かった、と白米をかき込みながら悠は心底思った。
コンビニ弁当を電子レンジで温めたものとは天と地程の差がある。
「お金、大丈夫なの?」
「サークルの会計から出ているので気にしないでください」
と、美鈴は彼の疑問に答えた。
つまり、悠宅に米がないことは調査済みということだ。
「あ、なるほど……」
と、彼は感心に近い様子を見せた。
案外キッチリしたサークルなんだな、と思い知らされたのだった。
悠はあっという間に夕食を平らげ、それを美鈴はニコニコしてみていた。
キッチンで洗い物をする美鈴。
制服を纏った背中に薄ピンクの生地がクロスし、蝶々結びで結われている。
どこかそそるものがあり、悠はチラチラと視線を向けていた。
時刻は20時になろうかというところである。
「じ……時間、大丈夫?」
気を利かせてか、彼は美鈴に訊いてみた。
本当は、何か話題がないと変な気を起こしそうだったのだ。
「まだ大丈夫です……」
キュッと蛇口が閉められ、静かな空気が訪れた。
遠くの方からクラクションの音が響いてくる。