花嫁サークル!! 68
「いや……そんなことより、さっきの話は本当なのか?」
「な、なんのこと?」
「好きな人がいるって……」
悠が懸念しているのは、好きな人がいながらサークルに所属しているということだ。
愛に負けたくないという理由だったとしても、好きな人がいるならサークルは辞めた方がいいと諭すつもりなのだろう。
「あぁ、あれ? ああでも言わないとさ」
まどかそこまで言うと、何かを思い出したかのように息を飲み込む。
「……ううん、ホント。好きな人がいるの」
彼女は小さく深呼吸を繰り返していた。
「それなら、サークルは辞めた方がいいんじゃないか?」
「……なんで?」
悠の気遣いに疑問を返すまどか。
多少のすれ違いに彼は気付いていない。
「だって……ほら、好きでもない奴の面倒見るの、イヤだろ?」
まどかは愛に対抗してサークルに参加した。
そのように彼は、まどか本人から聞いている。
「やっぱり頭は弱いのね」
「は……?」
「好きだから参加してるんでしょ? サークルに」
まどかの頬が桃色に染まっている。
それを知られたくないのか、彼女は悠の横を足早に通り過ぎた。
「……待てよ」
悠の静かな声色に、まどかは足を止めざるを得なかった。
彼の頭の中は半ば混乱している。
愛に対抗するために参加したというのは嘘だったのか、と。
しかし当初の参加動機とさっきの台詞の両方が本当だったとしたら、まどかの心を動かした出来事が昨日の朝から今までの間に起こったことになる。
その場合、悠にとってはこれ以上ないチャンスなのだ。
「お前の参加理由は、愛のことが第一なんだよな?」
「……ま、この前まではね」
間接的に、今は第一の理由ではないことを示唆している。
つまり、第一の理由が彼の花嫁を目指すというサークル方針に変わったということだ。
もっと噛み砕いていくと、まどかは悠のことが好きになったと言える。
「それは……俺がお前に手を出さなかったから……なのか?」
これは確認作業にあたる。
まどかのサークル参加動機が転換した理由、つまり、彼を好きになった理由を問うているからだ。
「……変なとこだけ回転早いんだから」
「え?」
「久遠が優しいなんて……意外だった……」
結局肯定も否定も示さなかったまどかは、無言のままの悠を残してその場を後にしたのだった。
────────
「じゃーん!」
愛が誇らしげに掲げるものを見て、悠とまどかは少し困惑した表情を浮かべた。
それもそのはず。
彼女が手にしているのはアイマスクなのだが、それを誇示されても返す言葉に詰まらないわけがない。
授業を終え、悠のうちに集合している彼女たち。
テスト一週間前は部活動は停止状態になる。
それは体育会系、文科系を問わない。
「で、それ、どうすんの?」
ようやく言葉を絞り出した悠に、愛は悪戯な笑顔を浮かべた。