花嫁サークル!! 65
いや、興奮しないように努力していた。
しかしそんな状況だと知ってか知らずか、あろうことかまどかは彼の背中に体を密着させたのだった。
「……触ってみたい?」
「え? 何を?」
「……私のカラダ」
トラウマに悩みつつも悠を挑発するまどか。
彼女の心理を理解できるわけもない。
むしろ、あの話は嘘だったのかと思わされる。
だが、彼女の声が震えていることに気付いた悠は、フッと笑って
「無理すんなよ」
と諭すように呟く。
彼女はそれを聞いて、自身の頬を彼の背中に寄せた。
「もし……」
まどかはそこで区切り、深く息を吸い込んだ。
そして長く息を吐くと、再び口を開いた。
「もし私が彼女だったら、どうする?」
「……どうって?」
「ほら、何て言うか……めんどくさくない?」
過去のことで性行為に踏み込めないまどか。
その彼女が恋人だったとしたら、確かに男には辛いものがあるかもしれない。
男子生徒に人気の高い容姿を持つが故に、その辛さは一際だろう。
だが悠は、
「そうかな?」
と疑問符を浮かべた。
「そうだよ……」
まどかは半ば確信しているように小さく呟く。
彼女が自分のトラウマに気付いたのは、実は恋人が出来てからのことだった。
性行為を求められたときに、自分の中で眠っていた恐怖が蘇ったのである。
そのことがあって、その彼にはフラれてしまった。
以来、中3の頃からずっと彼氏がいない状態なのだ。
まどかには男性器に対する恐怖と、それを理解してもらえないかもしれないという異性に対する不信感の2つが根付いているのである。
故に、友だち以上の関係を築くことを、彼女自身が諦めているのだ。
「でも、好きだから付き合うんだろ?」
「うん……」
「俺ならきっと、一緒に解決策を探すと思うよ?」
「一緒に? どうして?」
「だって好きだもん。理屈じゃねーよ」
どこか優しいトーンの声色がまどかの耳をくすぐる。
そこから伝わっていく暖かさに、彼女の胸は高鳴っていた。
まどかは、サークルに参加した本当の理由に気付かされたのだった。
深層のどこかにあったトラウマを克服したいという希望。
それは、愛に対する対抗心に包まれていた。
しかし悠と話し、接するうちに、自分でも気付いていなかったサークルへの参加動機を思い知らせたのだ。
「彼女じゃないけど……探してくれる? その……一緒に……」
その言葉が意味していることはまどかも悠も理解できている。
「……大丈夫なのか?」
「うん……」
久遠となら、と言った彼女の声は小さく、彼には届かなかった。
「抱き締めて……?」
そのリクエストに答え、彼はまどかの方へ寝返りを打つ。