花嫁サークル!! 64
「パソコン貸してくれる?」
ドライヤーをあて終えたまどかは、何故か居直っている悠に言った。
一緒に寝ようと言われ、半ば強制的に仕舞い直されたこたつ布団。
それがあったスペースへと机を戻した悠は、
「何すんの?」
と言いつつパソコンを立ち上げる。
「ほら、活動報告ださないと」
「活動報告……?」
「そ。活動報告。サークルのページって登録してる?」
「あぁ、それなら……」
お気に入りの中から花嫁選考サークルのトップを引っ張り出し、接続した悠。
最近は二年生ばかりが担当を持っているせいで人物名を探す必要がなくなったため、彼がサークルのホームページを見るのは久し振りのことだ。
まどかはコンテンツの一つをクリックして目を通していく。
「中出ししたんだ……」
「え? あ、えぇ?!」
あわてふためく悠を放置したまま、まどかはキーボードをうち始めた。
「え〜とっ、晩ごはんはカレーだったでしょ? 食材は……」
そう、活動報告とは、担当者がその日に行ったことをメンバーに知らせるためのシステムなのだ。
朝夕のメニューと使った食材などはもちろん、買い出しの有無、使った費用などを明記していく。
それを把握することで今後の食生活や担当者が使える会計の上限を管理するのである。
また、理想のシチュエーションのうちのどれかを実行したのであれば、それも報告しなければならない。
次の担当者が未だ実現されていないシチュエーションを把握するためである。
もちろん、実現させることができるかどうかは担当者本人次第なのだが、参考程度にはなるだろう。
その他、悠の体調や気になる言動なども書き込まれる。
しかし、活動報告は担当者にだけ義務付けられている。
悠に呼び出されて何かしらのことがあったとしても、それを報告する必要ない。
ただし重大な内容、例えば、好きになった理由が明らかにされた場合などは、担当週でなくても報告することになっている。
活動報告板にルナの書き込みが多いのは、悠に問われたメンバー情報を何処まで話したかが記されているためだ。
「あ、そっか……そうなってんだよね……」
と独り言を呟くまどか。
「訂正しとかないと……」
そう言って息をついたまどかは、パソコンから手を離した。
悠はその脇から手を伸ばしパソコンをシャットダウンさせた。
突如訪れた静寂。
その彼方に響いたのは、まどかの声。
「先に入ってて。スカート脱がなきゃ痕がつくし……」
「そう……だよな」
悠はそろそろとベッドに潜り込み、それを見た彼女は明かりを落とした。
暗闇の中に、パサッと響いた音。
その数秒後には、悠の背中にまどかの温もりが僅かに触れていた。
妙な緊張が悠を襲う。
生殺しのようなシチュエーションでありながら、理由を知っている彼は性的興奮は覚えていない。