花嫁サークル!! 63
愛とまどかをこの週に割り振ったのは、妥当と言えば妥当なのだろう。
「ちょっと心の準備をさせてください……」
そう言って、悠はドライヤーのスイッチを入れた。
彼らが机に向かい合って、早2時間。
悠の苦手分野である数学の問題集も一区切りがついた。
「だーっ! もう無理! 死ぬ!」
頭をカリカリ掻く悠を横目に、まどかは採点を始めた。
「……ぷふっ」
「んだよ?」
「計算ミス多すぎっ」
クスクス笑うまどかに、彼は拗ねたようにベッドに身を横たえた。
「……つか、終電過ぎてんじゃん」
今更ながら気付いた悠は、慌てて身を起こした。
「勉強してたら終電過ぎたって連絡してあるから」
確かに嘘ではない。
ただし、相手はルナだと伝えてある。
「わりぃな」
「私がやらないと、愛はなんもしてくんないでしょ?」
そう言って、まどかは少し頬を赤らめた。
「はいっ。まずまずって感じかな?」
ふぅっと息を吐くまどか。
「では久遠くん。解説するから良く聞いておくように」
少しおどけた様子で言う彼女に、悠はベッドから下りて改まった。
更に1時間後……。
悠は大きな欠伸を一つ吐き出した。
「……もう寝よっか」
悠の様子を見て、まどかが呟いた。
彼の欠伸がうつったのか、彼女も遠慮がちに口を開ける。
微睡む目元を擦り、彼女は静かに立ち上がった。
「シャワー、借りるね?」
「お、おぉ……」
何故かドキリとした悠。
浴室に向かう彼女を目で追い、姿が見えなくなると机の上を片付け始める。
「って、アイツ……何処で寝るんだ?」
人が泊まることを想定していない彼の部屋には、ベッド以外の寝具はない。
仕舞ったこたつ布団を引っ張り出せば、或いは代用できるかもしれない。
枕は我慢するとして、彼は早速準備に取り掛かった。
こたつ机を角の方へ追いやり、こたつ布団を取り出しにかかる。
ベッドの上も軽く整理し、まどかの帰還を待っていた。
サークルが発足してからこの家に人が泊まるのは、意外にも初めてのことである。
彼らはまだ高校生なのだから、当然と言えば当然だ。
そのせいか悠はどこか心が穏やかではない。
まどかとの性交渉はないものだと分かっていても、このシチュエーションにはどこかソワソワしてしまうのだろう。
それからしばらくして、浴室からまどかが出てきた。
「なに? それ」
タオルを頭にかけモサモサと優しく擦りながら、彼女は悠に問う。
「ん〜……俺の寝床?」
まだ畳んだ状態のこたつ布団を軽く叩きながら彼は答えた。
制服姿のまどかは風呂上がりの熱にあてられ、胸元を大胆に開けている。
タオルを取ると濡れた髪が露になり、制服とあいまって変に妖艶に映っていた。
「いいじゃん。一緒に寝よ?」
「え? でも、お前……」
「ホント、久遠の頭はピンク一色なんだね」
そう言って、まどかはクスクス笑った。