花嫁サークル!! 60
その声には気迫はなく、寧ろ軽い妬みを感じさせる。
「……なんで?」
「だって……悔しい。あんな素直に気持ちを表現できてさ……」
それは性行為を指しているのだろう。
トラウマに悩むまどかにとって、付き合った先に待ち受けるその行為を受け止めることができないのだ。
男性器に対する異常なまでの恐怖が蘇り、彼女は恋にすら踏み出せずにいる。
愛と同じような容姿・性格の彼女は、やはり愛と同じようにファンも多い。
しかしまどかにとって、彼女に言い寄ってくる男は恐怖でしかないのだ。
「上がろう」
シャワーの蛇口を絞った彼は、徐に立ち上がる。
「え? でも……」
「得意な料理は?」
「は? カレー……?」
「鉄板だなっ」
クスクスと笑う彼の声は弾んでいた。
「作ってくれよ、カレー」
悠は終始後ろを向けたまま、浴室を出ていった。
静けさの中に取り残されたまどかは、彼のその行動に少なからず驚いていた。
当初の紗耶と同じく、悠のことをエロの固まりとして認識していた彼女。
だが悠の見せた意外な優しさが、心の隙間に染み込んでいったのだった。
「やられたぁ……」
遅ればせながら悠のところへ駆け付けた愛は、頭を抱えてそう呟いた。
「随分遅かったね」
勝ち誇った声色のまどかは、食後のリラックスタイムを悠と楽しんでいた。
肉付きのいい太股の上に、彼の頭がのっかっている。
「はい、終わりっ」
悠の耳にふぅっと息を吹き掛けたまどかは、彼の顔を覗き込む。
しかし彼は、心地好さそうに寝息をたてていたのだった。
「寝ちゃってるよ……」
起こさないように注意しながら、彼女は耳かきを机に置いた。
彼女に続いて悠を覗き込んだ愛もまた、悔しさを滲ませつつも微笑んでいた。
「……あんた、どうして久遠のことが好きなわけ?」
まどかに問われ、愛は少し頬を赤らめる。
「中学の時にさ、久遠くんの学校に行ったことがあるの。練習試合で。その時に……」
「んっ……んん〜……」
ぐーっと伸び上がる悠を見て、慌てて口を押さえる愛。
好きになった理由を彼に直接聞かせることは御法度なのだ。
「あ、ごめん……寝てた」
眠気眼を擦りながら、彼はゆっくりと身を起こす。
「お……愛。遅かったな。先に食っちまったぞ……」
「うん……」
愛は悠へと身を擦り寄せる。
「……寝起きのご奉仕を致します」
「わわわ私は帰ろうかなっ」
彼のズボンに手をかけたのを見計らったように、まどかは慌てて身支度を始める。
「ちょ……愛?!」
「じゃ、また明日」
「え、あ、おぉ……おぁっ」
悠が襲われているのを尻目に、まどかは急ぎ足で彼の部屋を後にした。
一方悠はズボンをひん剥かれ、下着の上から息子を擦られている。
「悠様……」
愛は悠に口づけをせがんでいた。