花嫁サークル!! 31
恐怖に似た緊張を悠は覚えていた。
まさかサークルのメンバーがあんなに近いところのいたのか、と。
メンバー表を見たときには、紗耶は確かにいなかったはずだ。
しかし、確かに彼女はそこにいる。
つまり、あの後にメンバーが増えたことになる。
とは言うものの、タネを明かすと、メンバーが増えたのは一度だけである。
悠がメンバー表全体を見たのは一度だけだ。
その時には、サークルの承認情報が全体に及んでなかったのである。
その後に彼がメンバー表を見たのは名前の確認のためのみ。
俄には気付かなかったのだ。
「……え?」
紗耶に凝視されていることに気付いた悠は、疑問符を声に出した。
「……やり過ぎ」
「……はい??」
彼の声には応えず、紗耶は美鈴の元へ向かった。
悠の目は正に点。
あれこれ考えた挙げ句、空のゴミ箱が目に入り、彼は顔が赤くなった。
里奈と夕貴を相手に、12コものゴムを使っている。
その残骸は全てゴミ箱へ追いやられ、ゴミをまとめた紗耶の目に留まったと言うわけだ。
────────
自分の席についた悠。
その隣の紗耶も自席の椅子を引く。
紗耶は寡黙な人物で、あれから彼らは言葉を交わしていなかった。
しかし彼女は、今までのメンバーと違う点がある。
その相違点は感覚的なもので確証はないのだが、悠自身もそれには薄々気が付いていた。
紗耶からは、悠への何かしらの感情も感じないのだ。
だが、もし彼女に悠への好意がなければ、サークルに所属している目的がわからない。
悠にアピールできる他に、サークルに所属して紗耶が得することが、はたしてあるのだろうか。
悠は隣の紗耶を窺うと、彼女と視線がぶつかった。
「…………え?」
表情を崩さないまま、紗耶が何かを彼に手渡す。
「……は?」
不思議に思いつつ、悠は手中の四角い物体に視線を落とした。
丸い部品の回りに強弱調整の目盛りが書いてある。
(おいおい……これってまさか……)
徐に丸い部分を回してみる。
右上の小さな赤いランプが光を放った。
「んくっ……」
紗耶から小さな吐息が洩れ、少し体が前傾になる。
(マジかよ……)
慌ててスイッチを切った悠は、躊躇いながら、また紗耶を窺った。
呼吸の乱れもなく平然とした様子に戻った彼女。
しかし、その瞳は何かを乞うように熱を帯びていた。
もう一度スイッチを入れて欲しいのか、それとも、もうスイッチを入れて欲しくないのか……それは不明だ。
授業中にオモチャを使って責め立てる、それは悠の理想のシチュエーションの一つである。
紗耶がそれに付き合っているのか、彼女自身がそれをして欲しいのかわからないのだ。