花嫁サークル!! 207
しかし、彼女の考えを文章に起こさせたのは悠である。
「あそこで、悠様が誰かに言ってたの。『やらないと始まりもしない』って……」
あぁ、と彼は漸く思い出した。
友人の恋愛相談を受け、告白させる後押しをしたことを。
立候補してみた花音は、新しい学校体制を始めることが出来たのだ。
「自分で言うのもなんだけど、私超優等生だったんだよね」
学力ではなく、校則を守るという点に於いて彼女は忠実だった。
何故髪の色を規制するのか、オシャレは学力と関係あるのか、恋愛は個人の自由ではないのか……そんな疑問を抱きながらも、決まりは決まりと割り切っていた。
しかし、周りの不満は授業をサボるという行動を誘発させ、学力は下がっていくばかり。
きっと校則を緩めたら学力は上がると思う。
そんな持論をここで結衣にぶつけていた。
「ってわけで、率先して校則が変わったことをアピールしてるんだよねっ」
自慢げに揺らしたツインテールが金色の軌跡を描き出す。
「でもさ……」
花音はニコリと笑った。
頬を赤らめて。
「悠様を好きなのは……そんな理由じゃない……」
「花音先輩……」
「想ってるだけじゃダメなんだって……教えてくれたから……」
悠に歩み寄る花音。
距離をなくした二人は、自然と目線を絡めていた。
「だから……したいの。悠様のしたいこと……私のためにも……」
「ちょっと」
突然割ってはいる声。
「さすがに不味いんじゃない? 二学期始まってるんだから」
その声の主は図書室から現れ、その中へと二人を誘う。
「ゆ、結衣っ……」
「大丈夫よ。『私は』何もしないつもりでいるから」
怪訝な顔を浮かべる花音に、結衣はそう諭した。
恋愛が絡むと友情は複雑な一面を見せる。
「誰のために図書当番代わってあげたと思ってるの?」
「結衣……」
しかし確かに友情はあるらしい。
花音は結衣に飛びついた後、悠を手招く。
二人を迎え入れた図書室は、入れ替わりに外へ出た結衣の手によって扉を固く閉ざしたのだった。
「悠さまぁ?」
入るなり甘えた声ですり寄る花音。
図書室には二人きりだ。
結衣は廊下で本を読みながら待機しているのであろう。
もし図書室へ来る生徒がいても、適当な理由をつけて追い返すために。
つまりここは安全地帯。
彼女が口付けをせがんでも、それは誰にもわからない。
柔らかい唇が押し付けられ、舌が興奮を求める。
顎を上げている花音の喉を混ざり合った唾液が流れ落ちていくのは、重力に従った当然のことだ。
「ぁっ……ん……」
離れた唇に粘液の橋が架かる。
花音は瞳を潤ませながら、彼の前に跪いた。