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花嫁サークル!!
官能リレー小説 - ハーレム

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花嫁サークル!! 203

「ってわけで、実はとーっても焦ってるんだよっ」

と笑顔で言われてもイマイチ実感が沸かない悠。
通学路の川原を歩きながら、彼は花音がいかに焦っているかを聞かされていた。
恋愛にも焦っているのだが、何を隠そう、彼女は受験生。
いくら生徒会長という実績があったとしても、学力もそれなりに必要となる。
任期は二学期の終業式までなのだが、それから手をつけていたのでは当然間に合わない。
恋患い状態の花音は、早く正式候補となって勉強の方にも本腰を入れたいのだ。
欲を言えば、学園祭が終わってすぐだろうか。
学園祭以降は大きな学校行事もなく、逆に言えば、学園祭は花音率いる生徒会の集大成とも言える。
従って、いずれにせよ学園祭以降にならないと勉強に集中できないのだ。
それは同時に花嫁候補を決める期限日にもなるのだが、彼がそれを知るのはもう少し後のことである。
二兎どころか三兎も追っている花音は、悠にプレッシャーを与えずにはいられない。
彼はそれを受けつつも、憎めない笑顔に焚き付けられていた。



方程式。
ブラックボードに記されたそれはすんなりと解を出す。
しかし彼の頭の中はなかなか繋がらない点がくるくると回っていた。
図書室の前の人気のない廊下。
奥まったその場所に、彼は二回しか行ったことがなかった。
本を借りた時と、返した時である。
そこは花音の思い出の場所だ。
そして今朝聞いた、そこが思い出の場所になった時期。
それは昨年の秋口だということだった。
それを聞いた彼はますますわからなくなる。
図書室の前は人が近付かないから人気がないのであって、彼はそんな生徒の一人なのだ。

「ねぇってばっ」

掠れながらもはっきりした呼び掛けに、彼は意識をそちらへ持って行かれた。

「オレンジのマーカー貸して?」

既に何度か声をかけていたのだろう。
悠が顔を向けた途端、美穂はひそひそとそう告げた。

「あぁ」

彼は筆箱をガサガサ漁り、橙の蛍光ペンを手渡す。
それを受け取った美穂は数学の教科書にラインを引き始めた。
彼女のその様子を見て、悠は急いで板書を写しにかかる。
数式、記号、公式……その作業が一段落すると、また自ら迷路に迷い込んでいく。
漫画から引用した台詞。
彼が直接花音に伝えたというのは考えづらい。
いつ、何処で耳にしたのかと言えば、昨年の秋口に思い出の場所でというのが濃厚だろうか。
しかし先に述べた通り、あの場所はめったに人が近づかない場所である。
そう、人気のない場所。
そういう場所にはそれ相応の使われ方がある。
例えば……。
彼の思考が働き始めたそのとき、前の席から二つ折りの紙片が回されてきた。
悠は反射的にそれを広げてみる。

「私には飽きたのね」

広げられた小さな紙片の真ん中には、更に小さな文字でそう記されていた。

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