PiPi's World 投稿小説

花嫁サークル!!
官能リレー小説 - ハーレム

の最初へ
 188
 190
の最後へ

花嫁サークル!! 190

「何処の誰が足踏まれて恋するんだよ……」

「はい! はーいっ」

美穂の嬉しそうな、授業中には見せたことのない綺麗な挙手。

「へ、へぇ……じゃあ美穂はここで、お前とぶつかった挙げ句、足まで踏んずけられた俺を好きになったわけなんだな……」

「うん、そうっ」

「あはは……」

乾いた笑いが悠の口を突く。
だがその理解しがたい理由を肯定的に捉えると、右足への執着に納得がいく(?)ようだ。

「私ね……」

一瞬翳る美穂の表情。

「何をしてもダメなんだ」

その告白は、悠が姿勢を正すのに十分な響きを持っていた。

「志穂があんなだから……何て言うの? 引け目、感じちゃってさ……」

誤魔化すように笑顔を作るも、声のトーンまで反映されていない。
ゆっくり階段を上りながら彼女は独白を続ける。

「テストが来る度に、どうせ私はできませんよーって……やる前から決めつけて……勉強なんて全然しなかった」

アハッとおどけて見せる美穂。
それは、逃げていた自分に気付き、それでも目を反らしてきた事実を一笑するかのようだった。

「でもさ……いくら志穂より好き勝手やってても、偽物の解放感? みたいな感じなんだよね……」

渡り廊下に出ると、夏の残り香がそっと吹き抜けっていった。

「そこで久遠くんのお出ましってわけ」

「はあ……」

間の抜けた声を洩らす悠。
話の関連性が全く把握できない。

「あの日……久遠くんに足を踏まれたあの日……私、怒ってたわけ。そりゃもうずーっと。踏んづけ返してやろうとした一撃をまんまと避けられて、とーってもムカついて……」

更に階段を上っていく二人。

「気付いたら……一日中、久遠くんのこと考えてた。劣等感も忘れるくらい……」

そこには空が広がっていた。
南中高度から少し西へ逸れた太陽が輝く、大きな空が。

「ほら、あの時怒鳴ったでしょ? さっきみたいに。あれでなんかスカーッとしたんだよね。ま、代わりにムカムカした日になったけど」

どちらともなく清々しい青い空を眺めいた。

「でも、それだけじゃない……」

「ん?」

「サークルに入って、私、わかったの。志穂は志穂なりの苦悩があることも」

先程とは違う、自然な笑みが美穂から溢れ落ちた。

「私にしか出来ないことも……それを教えてくれたのは、久遠くん。あなたなの」

彼女は頬を赤くして、照れ臭そうに毛先を指に絡めつけている。

「あなたがいたからサークルが出来て、あなたを好きになったからそれに入って……志穂があなたを好きだから、私たちはまた笑い合える……」

彼女の顔は更に紅潮し、瞳は潤みを帯び始めていた。

「久遠くん……」

彼の胴体に腕を絡め、彼女は顔をグッと近付けた。

「好き……」

触れ合う唇。
学園祭の準備に追われる校内からは賑やかな喧騒が溢れ出し、それは屋上にも届いている。
だが接吻を交わす二人の空間には、とても穏やかな時が流れていた。

SNSでこの小説を紹介

ハーレムの他のリレー小説

こちらから小説を探す