花嫁サークル!! 189
ちなみに、二学期からは日替わりでアピールタイムをもつようになると、登校時に彼は聞かされた。
日替わりにしなければ学園祭準備の話しについていけず、また、アピールにも大幅な差が生まれる。
特に正式候補でないメンバーは、焦れったい想いを抱き続けることになるのだ。
そういう理由からかは不明だが、悠は美穂に連れられ通常教室棟の1階に連れてこられたのであった。
階数と学年が一致する配置であり、つまりここは、1年生の教室が並ぶ階にあたる。
教室の並ぶ廊下は昇降口へ続く廊下と交わっており、丁度その角にあたる場所で
「ここ、思い出の場所なの」
と美穂自らその事実を告げた。
悠の動向はホームページを通して皆が把握しており、彼が、恋に落ちた場所と時期を訊いているということは筒抜けなのだ。
もちろん、その結果やその後の交わり等、事細かに報告が上がってくる。
詳しければ詳しいほど、発信した側に多少の優越感をもたらすためだ。
特に性交内容となると、あんなことしてあげた、こんなことをされた等、悠の願望を叶える実力があることを見せつけるのである。
それを見た側は嫉妬と羨望を抱き、想像力豊かなメンバーほど手が秘部へと伸びてしまう。
ノーマルだけでなくそれ以上を彼に求めてしまうのは、そういった事情があるのだ。
悠に必要な人間なのだと、願望に応えることで自答させているのである。
無論、彼の性癖に性的魅力を感じるという体質もあるだろうが。
悠の存在は心的のみならず、肉体的にも満たしてくれる存在になっていたのだった。
「こ……ここ?」
悠は思わず聞き返してしまった。
「うん。何かビビビッって来ない?」
クルンと軽く内側に巻かれた金色の髪を弾ませ、彼女は文字通り悠の顔を覗き込む。
「ん〜……」
腕を組んで考え込む悠。
階段は昇降口から伸びる廊下の延長にあり、つまり登校すれば確実に通るそこが美穂の思い出の場所だと言う。
日常に溶け込みすぎていて、逆にわかりづらい。
「1年生の、1学期の中間の前……だったかな?」
思い出したかのように時期が付け加えられた。
中間というのは中間テストのことだ。
「う〜ん……」
彼は唸りながら視線を廊下や壁に忙しなく這わせる。
その様子から、ビビビッときてないことは明白だ。
「あんたねぇ……」
ぷるぷると震える美穂は、突然悠ににじり寄った。
「何処見てんのっ?! その目ん玉はお飾りなわけ?! ふざけんじゃないってのっ! 私にも……」
烈火のごとく罵倒した彼女は、そこで口を閉ざした。
「……踏ませろ〜?」
ハッと何かを思い出した悠。
彼の洩らした言葉に美穂は表情を明るくさせ、うんうんと何度も頷いていた。
「え、嘘だろ……」
彼はひきつった笑みを浮かべる。