花嫁サークル!! 184
「悠の風邪ならもらってもいいのにな」
からかうように微笑む夏希に、彼はまた苦笑いを浮かべた。
「で、なんだけ?」
「あ……夏希が俺を好きになってくれたのは、いつ、何処で?」
「中学2年の秋、鳥の飼育小屋」
ズキッと悠の胸が傷んだ。
古傷が疼き、その記憶が蘇る。
「それは……ピピが……」
ピピというのは、九官鳥の名前である。
ピピは川原で翼を負傷していたところを保護された。
何故そこにいたのかはわからない。
飼い主を探すチラシを作成したものの、とうとう音沙汰なかった。
そして、彼らが中学2年生の時の秋、ピピは亡くなったのだ。
彼が消えた命を目の当たりにした、忘れもしない出来事である。
「そう、その時」
「お前……あの時俺は、ピピのお墓を作ろうって言っただけじゃないか」
「それだけで悠を好きになるのはいけないことなの?」
「……じゃあ、まさか……そう言ったから……?」
夏希は深く頷く。
「私、悠よりはマジメに飼育委員やってたつもりだけど、あの時泣けなかった。悠と違って……。それでわかった。私は使命で世話してるけど、悠は心で世話してるって」
ベッドを背もたれに居直った彼女は虚空に目線を向ける。
「動物はあったく接してくれてると思ってたけど、私が一方的に求めてたんだなって……」
確かに、あの後から夏希は変わった。
人を毛嫌うことがなくなったのだ。
他人が心を開かないのではなく、自分が心を閉ざしていることに気付いたのである。
「お粥、作ってあげる」
「あ、うん……」
重い空気を払拭するかのように夏希は腰を上げた。
次に彼が目を醒ました時、室内には黄昏が迫っていた。
布団に上半身を横たえる夏希に、申し訳なさを感じつつも笑みが溢れる。
「ん……」
彼の目覚めが夏希の睡眠を妨げたのか、彼女は惚けた声を洩らし、グーっと延び上がった。
「おはよ」
「ん……」
寝ぼけぎみに辺りをキョロキョロ見回し、特に取り乱す様子もなく、タオルを取り替える夏希。
「汗……拭く……」
乾いたタオルを手に取り、悠の頬にあてる。
「脱いで」
寝起き独特の柔らかい声色に促され、彼は身を起こした。
シャツを脱ぐと、夏希が恭しくタオルを押し当てる。
「悠……」
そのタオルは、しばらくすると彼女の舌に替わっていた。
「おい、夏希……」
「私がきれいにしてあげる……悠……様……」
首筋にあてられたしたは後ろへ回り、項や背筋を丹念に舐め上げていく。
「ん……んは……」
やがて舌は脇に及び、そのまま二の腕、指先と滑っていった。
それは胸板にやってきて、いじらしく乳首を弾くと、下腹部へ下りていく。
「舐めさせてください……」
固くなったソコを撫でながら、夏希は上目に懇願した。