花嫁サークル!! 183
「みんな焦ってる。候補が増えたら、早く自分もって。でも、その気持ちを受け止めていくのは、悠、あなたしかいない」
皆腹をくくってる。
前に夕貴が言ったことだ。
その覚悟が全て彼にのしかかっていく。
それが今の悠の状態である。
体を受け止めるだけなら性欲で切り抜けられるかもしれない。
でもそれに気持ちが伴えば、彼の心にはそれだけ負担が増えていく。
それが、悠の横顔から夕貴が読み取った彼の状態。
彼女としても、早く正式な候補となりたい。
しかし、皆が皆そう思ってしまうと、悠は潰れてしまう。
「今日は休憩。また明日も頑張るんでしょ?」
「おまえ……」
次に大輪が咲き誇ったときには、二人は寄り添っていた。
「私と花火を見たことだけ、覚えてて……」
住宅街に囲まれたその公園は、家から花火が見えるためか、わざわざでてくる人はあまりいない。
まぁ、会場の川辺に赴くことはあるだろうが。
星空に咲くその輝きは、二人の胸に染み込んでいく。
その素晴らしさを隠れ蓑に、夕貴は気付かないフリをしていた。
初めて見た、彼の涙に。
――――――――
次の日。
彼に呼ばれてその部屋へ来た夏希は、鞄を置いて悠の隣に座った。
「で、話って?」
お下げの髪を揺らし、悠を見上げる。
裾の広がった黒いフリルのスカートに、白いキャミソール。
その上から、やたら飾りのついた黒いベストを羽織っている。
オーバーニーソックスは黒と青のボーダー柄で、先程履いていた黒いローファーと組みあわせても、ゴスロリが決まっていた。
ボランティア時の動きやすい格好とは違い、お洒落にしてきたのが窺える。
「夏希はいつ、何処で俺を好きになってくれたんだ?」
「………………」
夏希は無言のまま彼に顔を寄せた。
何の脈絡もない彼女の行動に、悠は若干焦りを覚える。
徐々に近付く夏希の額が、彼のそれとくっついた。
「熱、あるの?」
「え?」
言われてみれば気だるさがあるように思われる。
「体温計は?」
「大丈夫だよ、そんな「ダメ」
すっと立ち上がった夏希は、
「何処?」
と促す。
「そこの救急箱にあるかと……」
きびきびした動きでそれから体温計を取り出し、夏希は彼に手渡した。
悠はそれを脇に挟み、しばらくして音のなった体温計を取り出す。
「37度8分」
「平熱は?」
「知らねーよ、んなもん」
はぁっと溜め息を吐いた夏希に促され、悠は横になる。
彼女は風呂場から洗面器を持ってきて、水を張り、タオルを濡らした。
「ごめん……あんまり近づくとうつるんじゃ……」
「大丈夫。夏風邪はバカしかひかないから」
額にタオルをあてられた悠は、夏希の毒に苦笑を溢した。
そんな彼に、彼女は軽く唇を重ねる。