花嫁サークル!! 180
確かに、彼は取っ替え引っ替え抱きまくっている。
「体があれば誰でもいいくせに」
「誰でもいいなら嫁なんか選ばない」
「………………」
「こんな俺を、こんなに沢山の人が想ってくれる。俺をだぞ? こんなふざけた野郎をだぞ!? はやく嫁を選んで、皆にはもっと素晴らしい恋をして欲しい。そのために、どうして俺を想ってくれるのかを知りたいんだ」
紗耶は知らなかった。
悠がこんなにも真剣にサークルのことを考えていることなど。
「素晴らしい恋なら……もうしてる」
「え?」
「相手に求められるって、嬉しいのね」
初めて自分の気持ちを求められた紗耶。
自分のことを相手に想われるのが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
それは嬉しい反面、新たな空虚感を生み出している。
もっと相手に想われたいという欲求に伴われる空虚感を。
これは一般的に、切ないという感情なのだろう。
「あなたとっても小さい人よ。小さい私を見つけられるくらい、小さくて……大きい」
見つける。
その表現に引っ掛かる悠。
今まで誰にも気付かれなかったかのようなその表現は、きっと彼女の願望を表している。
そして、それを見つけ出したのが彼。
つまり願望を叶えた。
言うなれば、光をもたらしたのだ。
「そうかっ」
急に声を上げた悠に、紗耶は視線を向けざるを得なかった。
「俺がお前の友だちだからだ」
「え?」
「友だちになったから、紗耶は孤独でなくなった。だから好きになってくれたんだな?」
「…………なんていうか……」
紗耶の堅い表情が綻ぶ。
「エスパーね」
そしてふっと笑った。
やがて引かれ合うように唇が重なる。
「こんなキス、初めて」
感触をなぞるように指を這わせる紗耶。
「温かい……」
そして彼女はその温もりを求めた。
「ごめんね。汚い体で」
腕を回された紗耶は、胸元から彼を見上げる。
今までには感じなかった恐怖を微かに匂わせていた。
抱かれることを怖いと思ったのは初体験以来のこと。
だがその理由は初体験の時とは真逆で、その行為に慣れきった体を晒すことにあったのだった。
「今の紗耶が、きっと一番綺麗だよ」
「わかったこと言うのね……」
「……わかるよ」
ベッドへ雪崩れ込む二人。
「わかるけど……わからない」
「何それ」
「だからもっと紗耶のこと、教えてもらわないと……」
微笑む紗耶に、彼は口づける。
万を辞したかのように舌が絡み合い、唇が擦れ合い、吐息が混ざり合う。
「ふぁ……悠様……」
自分の服に手をかける紗耶の手を止め、
「今日はそれ禁止」
悠が優しくそれを脱がせた。