花嫁サークル!! 173
「ああしろ、こうしろ、もっとこうして、違う、こうだ……そしてお仕置き……」
いや、お仕置きではなくペナルティであって、しかも素振り10回程度と軽いものだ。
「初めは本当に辛かったのですが、だんだん上手くなっていくことを自覚できるようになると、はやく久遠さんに特訓していただきたくて仕方ありませんでした」
純華は潤ませた瞳で、遂に悠から目線を外す。
それは失礼だと知っていながらも、胸の詰まる苦しさにそうせざるを得なかったのだ。
「久遠さんのお叱りを受けるのが嬉しくて……胸に染みて、締め付けられました」
世の中、何がどこへ繋がるのかわからない。
「この方は私のために叱ってくださる……命令してくださる……お叱りを受けるというのは、私のことを想ってのことなのだと知ることができたのです」
彼女はそう締め括った。
悠は顔面蒼白ながらも、しかし叱られる経験は必要だろうと開き直りに入る。
実際、相手のことを思って叱るという場面もあるだろう。
彼は純華のスキルアップのために叱り、結果は伴っていた。
それは紛れもない事実なのである。
「それで、今でもテニスを……」
「はい」
相変わらず照れを隠して俯いたままの純華。
「テニスは本当に楽しいスポーツなのですが……あの、昂る想いは久遠さんでしか得られません……」
彼女は顔を上げ、切羽詰まった表情を悠に見せる。
「身体が熱くなる高揚感、痺れるような疼き、焦がされる胸……溢れ出る嬉しさ」
惚けた瞳を揺らしながら純華は擦り寄っていく。
地を這うようにして、そんな行儀の悪さなど気にならないくらい、彼に惹かれ、引き付けられていく。
「全て、久遠さんでしか……」
「純華……」
求められた接吻に応える悠。
柑橘系の香りと、シャボンを彷彿させるシャンプーの匂いが鼻孔をくすぐる。
汗臭さはなく、乙女としての身だしなみに留意していると思い知らされる。
もしかしたら、準備とは部活後のシャワーのことではないのかと思わされるくらいに。
「お話というのは……それだけではありませんよね……?」
期待に眼差しを輝かせ、物腰柔らかな表情は、男心を刺激するように切ないものへと変わっている。
「んー……遅刻したお仕置きが必要、かな」
「あぁぁ……ご主人様……ありがとうございます……」
お仕置きという響きに、謝罪よりも感謝を溢してしまう純華。
切なげに体を捩り、蕩けきった瞳で悠を見上げる。
「イケナイお嬢様だな」
「も……申し訳ございません……」
純華は彼にされるがまま膝の上へ乗せられた。
ベッドに座る悠の腿に胴を預け、四肢を付く。
一昔前の、子どもへの仕置きを思わせる格好だ。
「自分で支えろ」
「はいぃ……ご主人様……」