花嫁サークル!! 18
耳を疑うのも無理はない。
別荘を持っている上に、まだ他にもあるようなニュアンスが含まれているのだから。
「立ち話も何ですから……皆さんお待ちかねですよ?」
ニコリと笑って首を傾ける純華。
お嬢様を彷彿させる栗色の巻き毛がサラリと揺れる。
「あぁ……そうだな」
ここに来て、悠は純華がサークルのメンバーであることを思い知ったのだった。
中は普通のロッジのようになっていた。
入ってすぐにリビングのような広いスペースがあり、奥に階段とドアが2つある。
一方はトイレ、一方は風呂場のようだ。
机を囲むように、ルナと愛、美鈴に里奈が座っていた。
「「悠様っ」」
悠の姿を確認するなり、4人が彼を取り囲む。
悠は内心ホッとしていた。
彼の知っているメンバーばかりだったからだ。
ここに夕貴が入って全員……というわけではないらしい。
それは、
「急なことだったので、全員は都合がつかなかったんです」
と詫びるルナの言葉が裏付けていた。
「ははは……そんなに気にしなくてもいいよ」
彼の口から乾いた笑いが自然と出ていた。
彼らはしばらく机を囲んで雑談に花を咲かせていた。
そこでわかったことは、純華が桜花(おうか)女子大学附属高校に通っているということだ。
桜女附属は、悠達の通う高校から駅を境にして線対称の場所に位置しているお嬢様学校である。
そしてもう一つ。
純華は神楽崎家の一人娘であるということ。
神楽崎家はそこそこのお金持ちらしく、悠はこの時まで純華が本物のお嬢様だということを知らなかったのだった。
そんなとりとめもない話題で盛り上がっていると、机の上の時計の針はいつの間にか3時を指していた。
「そろそろ始めよっか」
ルナは何処かしら気合いを入れた様子で立ち上がった。
それに続いて悠の周りの者が次々に腰を上げる。
「え、なに? なになに?」
彼は一人あたふたしながら、流れに従って立ち上がった。
「久遠さん、あれを持ってきてくださいませんか?」
純華の指す先には、大きな段ボールがある。
悠は彼女の指示に従い、それを外へ運び出した。
意外に重いそれの梱包を解くと、中には炭やら着火剤やらが入っている。
「これは……」
「バーベキューセットです」
「で、まさか……」
「はい、そのまさかですよ?」
純華の微笑がやけに恐ろしい。
「……わかりました」
悠は渋々とセッティングにかかった。
一般的にバーベキューは、炭が赤々としているときよりも、白くなってから始めた方が良いと言う。
何かのテレビでやっていたと記憶を呼び覚ましながら、まだまだ掛かりそうな炭に向かって彼は団扇を扇いでいた。
海を臨んで建つ神楽崎家の別荘、その庭でひたすら作業をこなしていく。
室内で和気藹々とバーベキューの食材を準備する彼女たちを怨めしそうに窺いながら。