花嫁サークル!! 17
でも、一日じゃ名前を覚えるのが精一杯。良いところも悪いところも知らないままに、また新しい子がやってくる。
どうしても『軽く』見えてしまうんだ」
「解りました」
ルナがあっさりと呑み込んだ。
彼が、ルナの独断で決めてもいいのかといったような顔色でいると、
「悠様のご意見は、最優先事項なんです」
と補足がついた。
「悠の話はそれだけ?」
夕貴が目をパチパチさせている。
拍子抜けしたようだ。
彼は
「いや……」
と何かを言いたそうだったが、
「何でもない」
と結局何も言わなかった。
「では……」
とルナはオレンジジュースを吸い上げた後、切り出した。
「昨日の緊急ミーティングとホームページの投票結果から、明日の土曜から日曜にかけてイベントを行うことが全会一致で決定致しました。
つきましては、悠様にもご参加していただきたいのですが……」
「イベント?」
「はい。
本当は解散を考え直していただくために企画したので、行う必要はないのですが、折角の機会ですので……」
「どんなことするの?」
「秘密っ」
夕貴の顔は心持ち紅潮していた。
────────
「なんじゃこりゃ……」
翌朝、つまり土曜日の朝、悠が一泊分の荷物を持って玄関を出ると、スーツ姿の女が一人立っていた。
先程の一言は、彼女を見て思わず口をついて出たものだ。
「久遠悠様ですね?」
「は、はい」
「純華(すみか)様の命でお迎えに参りました」
「はぁ……」
「こちらへ」
女に言われるがままに彼はアパートの階段を下り、車の後部座席へ乗り込んだ。
「お話は予てより聞いております。
どうぞ、目的地に着くまで寛いでいてください」
女が運転席に乗り込んで言うと、車は発進した。
────────
そこには2時間ほどで到着した。
自然に囲まれたそこは日本海に面しており、裏手には森が広がっている。
悠は車中一言も話さず、ただ、“純華”という心当たりのある名前に、誰だったかを思い出すのに集中していた。
しかし、結局解らず終いである。
その建物の前に立っていた女の子を見るまでは……。
「着きましたよ」
とスーツの女が後部座席へ回るのを待たずに、彼は自らドアを開けた。
「お久し振りです、久遠さんっ」
「神楽崎っ」
ドアの前の女の子に、悠はその名を口走っていた。
悠と純華は中学の同級生で、3年生の時、同じクラスになっていた。
彼は純華を『神楽崎』と呼んでいたので、下の名前だけではピンと来なかったようだ。
「涼子さん。ご苦労様でした」
「いえ、とんでもございません」
ではまた明日、とスーツ姿の女、涼子は車に乗り込み、去っていった。
「涼子さんは、小さいときからお世話になってるんです」
「へぇ〜」
素っ気ない返事をしながら、改めて純華の背後の建物を見た。
「この建物は?」
「別荘の一つです」
「なにっ!?」