PiPi's World 投稿小説

花嫁サークル!!
官能リレー小説 - ハーレム

の最初へ
 143
 145
の最後へ

花嫁サークル!! 145

そして彼はその冊子を覚えている。
チェンジのアニメ化を祝ったその表紙はとても印象深い。
だがそれは昨年発行されたもの。
彼女は中学生である。

「お前……もしかして……」

だが、もしあのコンビニが里奈の思い出の場所であるのなら、あの時雑誌を譲った相手が里奈であった可能性は否定しきれない。

「え?」

驚きは里奈にも現れる。
まさか、一般的にはあんな些細なことを悠が覚えているわけがない。
その固執した思いが大きく揺れる。

「……あの時の子か?」

里奈の胸が高鳴った。
きゅうっと締め付けられ、息苦しさを覚える。
それはあの時に感じた切なさと全く同じ。
恋に落ちた、あの時と。

「あ、あの時とは……いつ、なのです……か?」

「その『ホップステップ』を譲った時……」

「ホントに……覚えているのですか……?」

里奈の態度の急変ぶりに悠は何かを感じた。
それは、里奈が恋に落ちた場面を想像させるのに十分な根拠となり得る。

「もしかして……里奈が俺を慕ってくれるのは、それを譲ったから……なのか?」

里奈の恋が急展開を見せていく。
星座を描くかの如く点が正しい道筋で結ばれ、彼女の恋は完全なもとなったのだ。

「っ……ぅぅぅ……」

低く呻いたと思った途端、里奈は大粒の涙を流して悠にしがみついていた。

「好きなんです……好きなんです、久遠先輩っ……」

彼が手の届く場所にいる。
名前も知らなかったあの人が、しっかりと受け止めてくれている。
箱にしまわれていた悠への想いは、今まさに封印から解き放たれたのだ。
その衝動が、里奈の頬を伝い落ちていく。
彼は子どもをあやすように彼女の頭を優しく撫でていた。
一頻り泣いた里奈は、胸元から彼を見上げる。
未だにうるうると揺れる瞳に悠の心が惹き付けられていく。
やがて二人の唇は距離を失っていった。

「……好きです、先輩」

里奈は再び自身の気持ちを紡いだ。

「…………里奈?」

何処か違和感を覚える悠。
彼を見上げる瞳は明らかに何かを求めている。
しかしそれは、悠の知っている輝きとは違っていた。
言うなれば、いつもの妖艶さとは違った光で彼の瞳を照らしている。

「もう……止まらないんです……」

「り……な……?」

彼は気付いた。
里奈の口癖が聞かれないことに。

「止められないの……お兄ちゃん……」

「おにぃ、んん……」

悠の驚きは接吻に阻まれる。

「今日だけでいい。そう呼ばせてください……」

その響きは、彼の名を知らなかった頃の熱い気持ちを蘇らせる。
しかも、独特の背徳感が漂っていて、里奈の心を昂らせた。

「里奈がそう呼びたいなら、それでもいい」

里奈のことを知らなさすぎる。
悠はそれを痛感していた。

SNSでこの小説を紹介

ハーレムの他のリレー小説

こちらから小説を探す