花嫁サークル!! 141
「でっ、ですからっ、その、料理を運ぶ専門と言いますか、えと……ごめんなさいっ」
スカートをギュッと握り締め、俯いてしまう理央。
途中参加の身でありながら生意気にも意見をしてしまった。
空気の読めていない発言をしてしまった。
きっと嫌われる。
そんな思いがぐるぐると渦巻き、自然と手に力が入ってしまう。
「それなのですっ!!」
突然声を上げた里奈。
片足を机に置いてビシッと理央を指す勢いである。
「んで? どういうこと?」
ひぃぃっと飛び上がる理央と違い、里奈の言動には慣れっこの先輩メンバー。
その中の一人である千秋が里奈に詳細を促した。
「純華先輩には料理長をしてもらうのですっ!」
「「料理長?」」
再び目を丸くするサークルメンバーたち。
「そうですっ。キッチンに籠りっぱなしなら接客しなくて済むのです。それに、料理提供の状態を把握する人物がいれば、余計なロスを軽減できるはずなのですよ」
「なるほど……」
納得がいったのか、皆感心したように首を縦に振る。
純華の気持ちを尊重できて、且つ、サークルにもメリットがある提案だ。
「……うん、二人が戻ってきたら、もう一度話してみましょ」
夕貴がその場をまとめ上げた。
荷物は置かれたままなので、化粧室にでも行っているのだろう。
「ありがとうございますなのです、理央先輩っ」
「へ? 私……?」
里奈がニコリと笑いかける。
「理央先輩がいなかったら、何も思い付かなかったのですよ」
「い、いえ、そんなっ……私は、何も……」
必要以上に力を入れた手をぶんぶん振る理央。
「そんなことないわ」
志穂は首を傾け、柔らかな表情を浮かべた。
「あの子の頭は掛け算だから」
「か、掛け算……?」
理央は夏希の言葉に疑問符を付ける。
「里奈ちゃんの頭は、ゼロからは何も産まないってことです。ねぇ〜」
「美鈴……覚悟はよろしくて?」
里奈の目がキラリと光り、夏希の言葉の意味を説明してしまったことを、美鈴は激しく後悔したのだった。
一方、店外に愛とルナの姿があった。
最早待ち合わせ場所の定番となっている駅前の噴水。
ミーティングルームのファーストフード店は、それを臨む飲食店の一つである。
ベンチで肩を並べる二人は、人工的に造り出された水のせせらぎを微かに拾っていた。
「……らしくないわね」
「ほっといて」
「はぁ……」
溜め息がルナの口を突いて出た。
「サークルができる前のこと……覚えてる?」
「………………」
「愛と同じクラスになってから、どれくらいだったかな……」
今年の4月。
ファンクラブのメンバーとして多少の面識があった2人は、一緒にこのファーストフード店で放課後を過ごすことが多くなっていた。