花嫁サークル!! 139
無論、ミーティングを行うためである。
「あ、えと、小野原理央……です。よろ、しく、お願い、しますっ」
歯切れ悪く自己紹介をした理央。
「話に聞いてたより全然可愛いんだけど……」
花音は身を乗り出し、理央に穴を空ける勢いで視線を這わせた。
生徒会役員の選出選挙は2学期の終業式に行われ、3学期からは新生徒会がそれを務める。
花音が出馬表明したときには既に悠と理央の関係は終わっており、元カノの存在は知っていたものの、実際に見たのは初めてだったのだ。
理央の風貌が彼女の焦りを助長させる。
「よろしくお願いするのですっ」
明るい里奈の声に続き、緊張気味ながら他の面々も挨拶を交わした。
賛成に入れたのは自分自身。
そう言い聞かせるかのように。
「早速本題に入ります」
ルナがその場の空気を作り上げていく。
「ゆっくんへの紹介を兼ねて、理央の歓迎会を開きたいと思います」
「え?」
真っ先に異論を唱えたのは愛だった。
「どうして? 必要なくない?」
「いえ、必要です。彼女には担当日を持ってもらわない分、歓迎会にはアピールする時間も含めてもらいますから」
「あ、そか」
美穂は納得したのか、そのように声を洩らした。
サークルの活動は第2段階に突入している。
自己紹介を含めた各自のアピールタイム。
その次に、正式な候補になるための活動をしなければならい。
寧ろこちらに本腰を入れないと話にならないのだ。
「他に何もなければ、日取りを決めましょう」
それを合図に、皆一様にしてスケジュール帳を開いた。
サークルとしては夏休みの間に歓迎会を済ませ、新学期の流れと共に第2段階へ突入したい。
しかし明日から部活が再開されることもあり、必然的に日程は絞られていく。
特に主役の理央は学園祭に向けた演劇部の舞台練習が詰まっていた。
その限られた中から、参加人数の多い日にちを幾つか拾っていく。
最終決定は悠のスケジュールが下すためだ。
候補を3つ程決めた後、ミーティングの内容は事務的なものへと移っていく。
「ではいつも通り現状把握に移りましょう。今、正式な花嫁候補なのは美鈴、まどか、そして愛。まだ報告してない人はいますか?」
誰もピクリともしない。
若干の焦りが生まれ、候補の3人を羨む。
「じゃあ愛。お願い」
ルナに言われ、愛は出納帳を開いた。
今ある予算の確認と会費の未納状態に加え、借金の残高を伝える。
借金とは、メイド服を仕立てる際に純華から借りた分である。
学園祭ではその借金の返済分に加え、材料費を上回る純利益を出さなければならない。