花嫁サークル!! 132
しかし、悲観な発想ばかりでは自分を変えられないのも事実。
もし、サークルの存在を知らないまま悠と頼を戻していたら、彼の求める性交がどのようなものかも知らず、ただ、自分が楽しいだけの関係におさまっていたかもしれない。
それは、本当に悠のためになったのだろうか。
サークルに入ることは、悠を見つめ直す良い機会であると共に、本当の意味で自分を変えるチャンスでもある。
なにより、もう一度悠と付き合える大きなきっかけとなり得ることなのだ。
理央の意思は固まった。
少しの不安を残して。
「私は、入りたい……けど……」
「けど?」
「サークルの皆は、歓迎、してくれるかな……」
「もちろんっ」
マウスを操作し、ある画面を開く。
「賛成16票、反対はゼロ。皆あなたを歓迎するわ」
それが悠のためなら……。
「じゃあ、改めてよろしくね。理央。私がこのサークルの責任者、佐弓ルナ」
「さ、佐弓さんっ、責任者なの? あ、なんですか? わたわたっ、私あの、馴れ馴れしく「ストップ」
テンパりだす理央の鼻先に、立てた人差し指をあてるルナ。
「同級生なんだからルナって呼んで? 私たちはライバルだけど、同じ目標を目指す仲間でもあるんだから」
「あ、じゃあ……ルナちゃん」
「なんかくすぐったい」
笑みを溢したルナに、理央の顔も微笑みを浮かべた。
「で? 理央はどうしてゆっくんを好きになったの?」
「うん……」
頬を赤らめながら理央は話し始める。
「去年、私が消ゴムを浮かせようと気を送ってたらね……」
「……え?」
「悠がクスクス笑って……、『魔法が使えるように練習してるの』って言ったら」
「はあ」
「『うん、お前は確かに魔法使いだ。俺の暗い気分を吹っ飛ばしてくれるからな』って言ってくれたのっ」
「へー……」
ルナはバカップルのなる染めを聞いているような気分に陥った。
しかし、これは実話である。
悠が一人暮らしを始めて1ヶ月程経った頃のエピソード。
最初こそ悠々自適に過ごしていた彼だが、徐々に誰もいない家に帰ることに寂しさを覚えていた時、消ゴムに念を送る彼女を見てどこか微笑ましくなったのだ。
「それで、ゆっくんはそのこと知ってる?」
「どうかな……告白したときには言ったと思うんだけど……」
「そう……」
ルナはマウスを滑らせ、サークルの規約、及び規定項目の説明に入る。
「……で、一番大事なのはここ。好きになった理由を伝えないこと。私が理央にゆっくんを好きになった出来事を話しても、それをゆっくんに伝えちゃダメってこと。いい?」
「でも、わかってもらえないと正式な候補にはなれないんだよね?」
「そう。だから思い出してもらうように持っていくの」
理央は要領を得ないながらも、コクンと頷く。