花嫁サークル!! 131
――――――――
数日後。
彼女は初めてルナの部屋を訪れた。
同じクラスではあったものの、あまり深い仲ではない。
しかし、悠のことで話があると言われたら、ここに来ることに躊躇いはしなかった。
「こうやって話すのは初めてね」
麦茶を薦めながら、相手の前に腰を下ろしたルナ。
「うん……それで、悠のっ……久遠くんの話って……何……?」
「そう焦らないで、小野原さん」
ルナの浮かべる笑顔に、理央の緊張がほぐれていく。
「小野原さん……久遠くんのお嫁さんになりたい?」
「お、おおっお嫁さん?!」
理央は一気に顔を赤くする。
「おおお嫁さんなんて、そんなそんな、お父さんにもお母さんにも紹介してないし、それに悠のご両親にもご挨拶してないし、あぁっ、悠のお母さんに気に入ってもらえなかったらあんなこと言われたりこんなこと言われたり……」
「お……落ち着いて?」
「あ、ごめんなさいっ……」
興奮気味の理央はコップを手にとり、麦茶を飲み干した。
そして氷を喉に詰まらせ、噎せ返り、ルナに背中を擦られて漸く落ち着きを取り戻す。
「でも……それ以前の問題……」
急に声のトーンを下げる理央。
そんな彼女に、ルナは核心に迫る話を始めた。
「私ね、サークルに入ってるの。『花嫁選考サークル』」
「花嫁選考サークル?」
「そう。久遠くん……ゆっくんのお嫁さんになりたい人たちが所属してる」
「……ファンクラブじゃなくて?」
「うん。これを見て」
ルナはパソコンを立ち上げ、サークルのホームページを理央に見せた。
そこには彼女の知らない悠の性癖、フェチポイント等も掲載されている。
それに次いで目を引かれたのは、今までの活動と次への課題・対策なるコンテンツの内容だった。
「な……なに、これ……?」
「私たちがゆっくんにやってきたこと。彼に喜んでもらって、一番気に入った人を花嫁にしてもらうの。それがサークルの一番の目的」
驚愕の表情を崩せない理央。
しかしルナは、本題を切り出した。
「あなたも入らない?」
「…………」
あまりの驚きに言葉が出ないようだ。
「本当はあなたと付き合いたいのよ、きっと。でも、私たちに気を遣ってくれたんだと思う」
ルナの声には少し悔しさが滲んでいる。
「だから、堂々とあなたを選べるようにしてあげたい。ゆっくんに喜んでもらうことが、私たちの一番嬉しいことだから……」
それは本心だ。
本心だが、葛藤は自ずと生まれる。
「あくまで予想。断言はできないけど……どうする?」
「私は……」
理央は悩んでいた。
悠の持つ性癖に応えられる自信がない。
付き合っていた頃は至って普通の性交ばかりで、特殊な性癖があるなどと考えたこともない。