花嫁サークル!! 127
ショッキングピンクの半袖シャツには崩れた英語がでかでかとプリントされ、ロックを彷彿させるベストの隙間から垣間見えていた。
全体的には黒とピンクが目を引き、毒々しさと可愛らしさを兼ね備えたゴスロリパンクのファッション。
かつての理央からは想像もできない服装である。
「あ、うん……で、話って?」
「あの、ここじゃなんだから……」
理央の提案で、二人は近くのファーストフード店に入った。
「あの、実はね……」
席について早々、理央は鞄の中をがさがさと探り、小さな箱をテーブルに置いた。
それは可愛らしくラッピングされている。
「誕生日プレゼント、なんだけど……」
「誕生日プレゼント?」
「うん……なんか、お父さんの休みの時期がズレてたみたいで、悠の誕生日にはこっちにいなかったから……。ごめんね? 遅くなって」
申し訳なさそうにしながら理央は弁解した。
そわそわした様子で、しきりに目線をキョロキョロと動かしている。
「あ……、開けてみて」
「うん……」
悠は慎重にラッピングを剥ぎ、箱を開ける。
「目覚まし時計か……」
それは買おう買おうと思って買わず終いでいた代物である。
携帯電話があれば時間も確認でき、アラームも設定できる。
故に、どうしても欲しいというわけではなかった。
しかし、あって困るものでもない。
寧ろ時計はあった方がいいだろう。
つまり理央は、悠の家に目覚まし時計がないことを知っていたのだ。
「ありがと。……?」
目覚まし時計を箱に戻そうとした悠の目に、メモ用紙程の紙片が入った。
四つ折りにされたその紙片を取り出す悠。
「あっ、そ、それは帰ってから……」
理央は悠を牽制するように彼の手を掴む。
しかし、しばらく押し黙った後、そっとその手を離した。
「ううん……やっぱり、今読んで……」
離された手が摘まんでいる紙片を開く悠。
妙な緊張が彼らを襲う中、目線は文字を追っていく。
「理央、これ「ごめんっ」
彼女は間髪入れずに話し始めた。
「勝手なのはわかってる。でも、私……ずっと悠が好きだった。別れてからも、ずっと……」
小野原理央、高校2年生。
悠の元カノである。
悠の童貞は理央の処女と共に失われた。
彼の初めての恋人だ。
今でこそ弾けた外見だが、悠の知っている理央とは中身が全く一緒。
素朴で、控え目で、そして女の子らしい可愛らしさを持っている。
何より、澄み渡る綺麗な声が印象的で、弱々しい波長の中を真っ直ぐな細い芯が通っていた。
「他に好きな人なんていなかったの。ただ……自信がなくて……」
テーブルに下りる理央の目線。
大きな瞳が潤みを帯び、ゆらゆらとたゆたう。
「……悠は自分が思ってる以上にモテるんだよ? 知ってる?」
今の彼ならその話に現実味を感じられる。
しかし理央にフられた昨年は微塵も感じていていなかった。