花嫁サークル!! 124
何を隠そう、涼子がこの場にいる目的はただ一つ。
亮輔への復讐に他ならない。
いつ首の骨をへし折ってもいいのだが、如何せん純華の存在が邪魔でしかたないのだった。
父親が亡くなって彼女が悲しむ姿が頭を過り、行動を起こせないでいる。
そう、純華に罪はないのだ。
懐中時計を手にした涼子は書斎を後にし、自身の準備を始めた。
彼女が否定した頭文字という解釈は実は正しい。
RとMを繋ぐ三本の線は、数学で合同を示すのに使われる記号、2つの図形の形・面積がピッタリと一致する際に用いられる。
「R≡M」とは、亮輔と美佳子は同じ……一緒だと言うこと示す印なのであった。
号泣する里奈を前にして、美鈴はあたふたしていた。
「禁断の恋は辛いのですぅっ……ぐすっ」
「り、里奈ちゃん?」
誕生日会の日に放映されたアニメが録画されたDVDを一緒に鑑賞させられた美鈴。
最終回と言われてもストーリーが全くわからない彼女は、取りあえず泣き崩れている里奈を抱擁し、掛ける言葉を模索する。
「ん……?」
「え? ちょっ、里奈ちゃん……」
抱き止められている里奈は何故か美鈴の胸を揉み始めた。
「大きくなったのです?」
「う……ん、ちょっと」
「むわぁぁっ!」
「んうぅっ! 里奈っ、ちゃんんっ!」
「美鈴とヒンヌー同盟を組もうと思ったですのにぃっ!」
「ヒ、ヒンヌー? もしかして、それで遊ぼうって……?」
「他に何があるのです?」
小さな胸を張る里奈に、美鈴は乾いた笑い声しか出せなかった。
「折角ヒンヌー友だちを発見したのですのに……」
胸を揉んでいた勢いは何処へやら。
里奈は寂しそうに視線を落とし、あからさまに口数を減らす。
「友だちに『ヒンヌー』が付くだけ?」
「ぅん……?」
「じゃあ今まで通りの友だちでいいよぉ……」
実は自分の胸囲をかなり気にしている美鈴。
わざわざ貧乳をつけることを恥ずかしそうに拒む。
しかし、そんなことよりも里奈には美鈴の言葉が胸に染みていた。
「今まで通りの……友だち……?」
部室と自宅に籠りっぱなしの里奈は、人付き合いが得意ではない。
所構わずアニメ雑誌やら漫画やらを読みあさる彼女は、クラスメイトから一定の距離をおかれ、上部だけの友だち関係で繋がっている。
しかし美鈴はどうだろう。
呼んだらわざわざ来てくれるし、話だって真面目に聞いてくれる。
それは美鈴だけではなく、思えば、サークルのメンバーたちは里奈の突拍子のない発想や言動を思いきり笑い飛ばしたり、実現に向けて頭を捻ってくれた。
今まで通りの友だちとは、いつのまにか回りにいた、何処かで欲していた存在だったのである。