花嫁サークル!! 102
冊子が配られた瞬間から、注目されているサークルの説明に、特に男子の期待が高まっている。
生徒会長だぜ? とか、マジでテニス部のあの娘だよ、などひそひそと盛り上がっている。
「私たち花嫁修行サークルは、皆でレシピを考え、実際に料理をし、食べあって次に繋げる……そんな活動をしていますっ。えー……活動を通して得た物をお披露目するため、この度参加表明をさせていただきました。よろしくお願いします」
花音に続き、ルナと愛もペコリと頭を下げた。
「何か質問はありますか?」
「どうして生徒会の人がいるんですか?」
その生徒の質問は、暗に投票結果の不正操作を危惧している。
「そうですね……有志の参加は今年初の試みで、集まらないことも考えられました。なので、私からサークルの皆さんにお願いして、表明に至りました」
「集計は選挙管理委員会にお願いしていることをお伝えしておきます」
生徒会からの補足もあり、他に質問は上がってこなかった。
冊子には丸を書き込む枠があり、学校の文化祭で出店してもいいと判断した場合に用いられる。
最終的に冊子は回収され、生徒集会は閉会した。
下校する生徒たちの中に、屋上に向かうルナの姿があった。
それを追うまどか、そして愛。
「話って何?」
「あ……実は……」
まどかは昨日のことをルナに伝える。
愛はそれを扉越しに聞いていた。
「そう……」
ルナは不気味なほどに冷静だ。
「辞める? サークル」
「……ううん。辞めようと思ってたけど、やっぱり続けたい」
「後悔しない?」
「……大丈夫」
まどかの瞳で判断するルナ。
未だかつてない威圧感に、まどかの不安が助長される。
「知らないよ? 規定違反の罰則は発足時に決まってるし、変えるつもりもない」
「待って、ルナっ」
堪らず愛は扉を開き、ルナに詰め寄った。
「まどかはね? まどかは……」
「わかってる。まどかの反応を見てたらわかるから」
でも、と続けるルナは、サークルを束ねる者として辛くても決断しなければならない。
「内容は変えない。変えられないっ」
「……なら、私も受けるよ。ペナルティ」
「あ、愛っ」
愛の台詞にまどかは当惑した。
「まどかが久遠くんに伝えて誰が得したって、私じゃない?」
確かに、その通りである。
「まどかの罰則は消せない。なら、私も一緒に受ける」
「………………」
ルナは少しの思案の後、
「わかった」
と呟く。
「3日後……いえ、4日後に施行するから。ゆっくんの誕生日は、皆でお祝いしましょ」
「ルナ……」
それは、厳しさの中にある優しさだ。
好きな人の誕生日に一緒に過ごせる……それはこの上ない喜び。
「……ありがとう」
愛はルナに礼を告げた。