アンデットな村人の僕 2
あれ、なんで裸なんだろう……。
アデルさんが僕の立ってるものをいじってる?
「うわあああっ!」
タケルが悲鳴のような声を上げて上半身を起こしたので、アデルが驚いて立ち上がった。
「ああ、まさか、こんなことが!」
青ざめて立ちすくんだまま怯えているシスターのアデルと、教会の礼拝堂の様子を見わたしたあと、手で股間を隠してタケルが祭壇から降りた。
私がタケルくんに弔いの儀式をもっと早くしていれば……。
シスターのアデルが動揺しつつ逃げ出さずにその場にいたのは、弔いではなく祓いの儀式をしなくてはと考えたからだった。
「あ、あなたはもう亡くなっています、死者の魂は天国へ召されなければ……」
「とりあえず服をって、え、僕、死んでるの?」
タケルが意味がわからず片手で勃起した股間を隠しながら、アデルに近づいていく。
「ひっ、タケルさん、死んでも死にきれないほど、なにか心残りがあるのですかっ?」
怯えているシスターを見つめ、股間を隠していない片手でタケルは頭をかいた。
そういえば森でへんな蛇に咬まれて……うーん。
タケルが咬まれた足首を見ると、真っ白な包帯が巻かれていた。
「死んでないんじゃないかな、たぶん」
「まさか、生き返ったのですか?」
シスターのアデルがあわててタケルの左胸のあたりに手をふれる。
肌はやはり冷たい。
「とてもゆっくりですが鼓動が。タケルくん!」
シスターが少年に抱きついて泣き出した。
いきなり抱きつかれたタケルは勃起したまま、泣きじゃくるアデルをどうしていいか困っていた。
とりあえず服を着て、礼拝堂ではなくシスターの部屋でお茶を出されながら、森の中で僕を咬んだへんな蛇の話をアデルにした。
「白いまんまるな蛇ですか?」
「うん、そうだよ」
それを聞いてアデルは本棚から古い本を取り出してきてテーブルに開いて置いた。
「これ、そうそう、こんなやつ!」
書いてある字は読めなかったけど、挿し絵の蛇はそっくりだった。
「これはツチノコという古代の神の使いとされているものです。でも、実際にいるなんて……」
シスターのアデルがため息をついた。
「伝承では、この蛇に咬まれた者は古代の神に魂を奪われるとあります。毒蛇で咬まれたら死んでしまうのではと考えられてきました」
「でも、生きてるけど」
「咬まれた傷痕は古代神のしもべの印である、と書いてあります」
古代神ってなんだろ?
僕はアデルに聞いてみた。
すると気まずそうに本の文字を指でなぞりながら、読んでくれた。
「その古き神は淫神なり。そのしもべに神の力を与えるものなり」
「いんしん?」
「淫らな神ってことです」
「力ってなんだろう?」
「わかりません。でも、あの、タケルくん、股間のものは、もう普通になりましたか?」
僕のものは勃起したままだ。
アデルは本を見つめて、また、ため息をついた。
「教会のシスターは全ての神に仕える身。タケルくんが嫌でなければ、私が神のしもべとなったタケルくんに奉仕しなければなりません」
「それって……どういうこと?」
「私が入っていいと言ったら、奥の部屋にまた裸になって来てください。わかりましたか?」
「うん、って、は、はだか?」
アデルは席を立って、奥の部屋に一人で入っていってしまって、僕は静かな部屋に残された。
「いいですよ、タケルくん、来てください」
しばらくして扉のむこうからアデルの声がした。