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ナジン伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ナジン伝 5

「メノリと申します・・・この奥に集団でも生活できる隠れ場所がありますので案内いたします」
慣れぬ敬語でしどろもどろにそう言うメノリに美しい王妃は精一杯の笑みを向けた。
「ありがとうございます・・・どうぞ良しなに」
メノリも聞いている・・・国王と王子が王都陥落で殺され、その首が城門に晒されたと・・・
それでも彼女は気丈に振る舞いここまで逃亡してきたのだろう。
そして、捕らえられればどんな酷い境遇が待ってるかも分からぬのにも関わらず、足手まといになる妊婦を保護する優しさ・・・
戦乱の世に甘すぎる人だが、メノリは『あの場所』であれば、この心優しき王妃達でも安全に暮らせると言う場所の心当たりがあった。


一方、ナジンにも思いがけない再会があった。
妊婦の一団の中にナジンの村の女性達が何人かいたのだ。
ナジンが姉のように慕っていた少女とその妹と母親、村の神殿の女僧侶と・・・
そして、ナジンの母と姉。
みんな妊婦になっていたが、それに関係なく嬉しい再会だった。
「ナジン!」
母のミレイユがしっかりと小さな息子を抱きしめる。
もう二度と会えないと思っていた息子に会えて嬉し泣きするしかなかった。
そして、姉のミリアも涙する。
婚約者が息絶える目の前で犯され、それから母娘は休む暇無く犯され孕ませられる地獄の日々から開放され、そして弟に再会できた。

「母ちゃん!姉ちゃん!」
思いがけず大切な人々との再会を果たしたナジン。
「母ちゃん、姉ちゃん、それにみんな、その腹…」
「ええ、帝国兵の子よ…」
母ミレイユは少し伏し目がちに答えた。
「…でも私達は産むつもりよ。この子に罪は無いもの。ミリアも他のみんなも同じ意見よ」
ミレイユは腹を撫でながら言う。大切な家族を奪った憎い帝国兵の子とはいえ、自分の胎内に新たに宿ったこの命を愛するという。何という強さだろうとナジンは思った。

「ナジン!感動の再会を邪魔して悪いが、いつ帝国軍が報復に来るかも分からないこんな場所に長居は無用だ。早くみんなを連れて安全な所へ行こう」
「うん!でも俺達の山小屋じゃあ、ここにいる全員は入れないぜ?」
「山小屋じゃないさ。私が見つけた秘密の場所があるんだよ。付いて来な!」
メノリは先頭に立って歩き始めた。


「…ここだよ!」
メノリが皆を連れて来たのは、打ち捨てられた古い砦だった。建てられたのはかなり大昔のようだが、石積みの城壁など今でも充分に城塞として使える状態だ。
「一体なぜこんな山奥にこんな立派な城が…?」
衛兵隊長のアーシェスはメノリに尋ねる。
「いやあ、私も見つけた時は驚いたんだけど、どうやら古代の遺跡らしい…」
「そう言えば聞いた事があります…」
サフィーア王妃が何か思い出したように言った。
「我がメナム王国の都は、現在のカルカシアに定まる前は確かこの辺りにあったと…」
「で…ではこの遺跡がそうだと…!?」
目を丸くするアーシェス。メノリは言う。
「この遺跡が何なのかは分からないけど、中には井戸もあるし、半ば野生化してるけど果物や野菜も採れる。大勢で住むにしても事欠かないよ」
サフィーアは城壁を見上げて呟いた。
「有り難い事です。もしかしたら祖先達の霊が私達を導いてくれたのかも知れませんね…」
そして、更に近づいた一行は驚きの声を上げる。
砦は崖の上にあるように見えたのだが、その崖は実は巨大な岩山であり、岩山の隅っこに砦が乗っかってると言った方がいい。
断崖で囲まれた岩山だから、防御的には完璧であろう。
「どこから入るのだ・・・この城は・・・」
アーシェスの呟きにメノリが笑う。
「大丈夫さ、ちゃんとした上り道があるからね」
そう言い、一行を誘った場所には岩山の裂け目があり、そこを通ると洞窟のようになっている。
少し急に上る洞窟内を暫く歩くと丁度岩山の中腹辺りに出て、そこからは人為的に作られた階段が上へと伸びていた。
その長い階段を上りきると出てきたのは岩山の頂上。
そこにある砦の大きさもさる事ながら、平坦な頂上がかなり広大で、いくつもの建物の廃墟が街がそこにあったという事を物語っていた。
「殆どの建物が潰れてるけど、廃材を集めたら全員が住める家ぐらいできるんじゃないかな」
メノリの言葉に王妃も驚きながら頷く。
かなり整理せねばならないが、この様子なら暮らしていける気がした。

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