男は麗香と普通の勃起したものを挿入するセックスを求めてこない。
添い寝をするように同じベットで眠る。
麗香が甘えて男の体に抱きついて眠る。
キスすらなかなかしてくれない。
それでも、麗香は満足していた。
麗香が処女だと男に正直に話したところ、男は麗香を処女のまま快感と悦びを教えることに夢中になった。純潔を奪うより先に麗香の心を奪った。
麗香には気がかりがある。
水の女、イザナミの娘とセックスした男は非業の死をとげる。麗香の父親も麗香が生まれて間もなく死んだ。それは根拠のない言い伝えではなく、消えることのない呪いである。
女が孕み、生まれた子が男の子なら、男は命を落とすことはない。
ただし、勃起はできなくなり、視力や聴力など何かの感覚を失う。
もし生まれたのが女の子、つまり新たなるイザナミの娘なら、初潮を迎えて、水の女になる頃までに、勃起不全になり男は落命する。
落命するまで一日なのか十年なのかは、誰にもわからない。もし水の女が孕まなければ、いずれ落命する。水の女に魅了されて一夜限りでセックスした男たちはその交情で、自分の子を孕ませなければ黄泉に連れ去られるように死ぬ。

３
麗香は男を失いたくないと秘密を打ち明けた。イザナミの呪い。イザナギを黄泉に引きずり込もうとした呪いについて話した。
男は麗香になぜこれほど惚れて、心を奪われたのかわからなかった。見た目が美人な女たちはいるが、それだけではなく生まれる前からそうあるべきだというように、ひきつけられている。
「この町で古くから暮らしている人は、夏祭りでも地元の女には手を出さないのよ。それは他所から住み着いた人はこの地域が彼差別部落だったからだと思っているけど、ちがうの……」
「もしそれが本当でも、俺には関係ない」
もう出会ってしまった。
麗香のなめらかな丸みのある尻にかじりついた時、男はわかってしまった。
他の女ではもう満足できない。
ぴったりと心が蕩けて重なりひとつになる伴侶はこの女だけしかいない。
「私とセックスしたら死んじゃうんだよ。今なら思い出だけでも残って生きられるよ。私、あなたを殺したくないの……」
「もし俺が死んだら一緒に死ぬか？」
男はそう言うと麗香を抱きしめた。
麗香は男の腕の中で泣いて「ごめんね」とかすれた声で何度も言った。
麗香はその後、妊娠した。
会社帰りに駅前からアパートに帰る途中でワンボックスの車に連れ込まれたのだった。
翌朝、服もストッキングも破かれ、顔を腫らした麗香は部屋の前で気絶していた。
男は麗香の頬の腫れがひくまで、濡れタオルで冷やしてベットのそばから離れなかった。
「私をやった連中は警察に捕まらなくても死ぬ。こんなの嫌、誰も殺したくないのに」
「呪いで死ななくても、見つけたら俺が殺してやる。ひでえことしやがって」
許さねえと男は沈んで思い詰めた表情で言った。麗香をレイプした男たちは撮影していた。
それがネットでＡＶ作品として流出したことを男も麗香も知らない。
麗香は妊娠した。しかし男は麗香と結婚した。
生まれたのは綾香である。
山のふもとの町から離れて、男は自分の地元に麗香と幼い綾香を連れて帰った。
一度出産した麗香は、水の女の因縁が娘に宿ることを知らされたとき、泣きじゃくった。
「かわいそうだよ、どうして」
男はタクシーの運転手の職を得て、親子三人で暮らしていた。
麗香はセックスそのものは吐き気をもよおすほど嫌悪感はあったが、自分の子ではないのに父親になってくれた男の欲情を慰めるとき、麗香も欲情して快感に身を震わせながら何度も絶頂した。
麗香と男は幼い綾香を連れて山を訪れた。巫女と会って話を聞くためであった。
巫女はいつでも山にいるわけではない。各地の修険者の修行場や霊地に出かけている。
巫女はセックスでもアナルセックスなら呪いは発動しないことを二人に教えた。
麗香をレイプしたのは四人の男たちで、初めはコンドームを着用していたが、破瓜の血の臭いを嗅いだ途端に様子がおかしくなった。
男たちは撮影も純潔を奪ったところで中断し、群がるように麗香を犯した。何度も射精しているのに勃起して、また入れたくなる。まだ他の男の精液が逆流して吐き出されている膣穴に挿入した。
四人の男たちの欲情に麗香は嫌なのに体が反応して、痛みがやわらいで、濡れて男たちの勃起したものを突き入れられ出されるたびに絶頂した。
どれだけの時間が経過したのか、夜明けまでが長く感じられた。男たちはもう勃起しなくなる限界まで出しきると、麗香を車から引きずり出して公園に置き去りにして逃げ去った。
綾香がその四人のうち誰の子かはわからない。
そのことは麗香も男も娘の綾香には隠していた。
血液型が父親も母親もＡ型なのに、綾香はＡＢ型だったので、養女なのかと中学生になった綾香が、巫女の前で二人に聞いた。
綾香は巫女から水の女、イザナミの娘の末裔であることやレイプ事件の話を聞かされた。