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もうじき
官能リレー小説 - 人妻/熟女

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もうじき 1

第一章 愛人綾香


綾香の誕生日に何かプレゼントをしたいから何がほしいか聞いてみた。すると、一緒に温泉旅行に行きたいと言われた。
「ああ、行こう」
それを聞いて、綾香は満面の笑みで抱きついてきた。普段はあまりはしゃいだりする性格ではない。三十二歳、バツイチで、初対面の印象も真面目でいかにも仕事ができそうな印象だった。
綾香は同期の同僚と社内結婚したが、一年ですぐに離婚した。夫の浮気相手は後輩社員である。
それから綾香はファッション誌の編集部から、マンガ雑誌、アダルト雑誌、そして今は、官能小説の月刊誌の編集部に在籍している。
後輩社員の父親は出版社のかなりの株主で、後輩社員はコネで入社し、元妻である綾香をつきあっている男から引き離すために手を回したという噂もある。
よほどうれしかったのか綾香がごきげんの笑顔を浮かべていると、色白で肌も綺麗なので、まだ二十代でも通用しそうなぐらい若々しく見える。
こちらは区役所勤めの公務員だったが、今は官能小説作家である。
地方の同人文芸誌で賞をもらったが、大手文芸誌の有名な文学賞は残念ながら授賞できていない。
純文学から官能小説に宗旨変えして、四十三歳になるが、派遣の日雇いアルバイトしながら作家としてどうにか暮らしている。
四十歳の妻の雅美と、十八歳の娘の静香がいるが別居している。
あまり有名ではない官能小説家にとっては
毎月仕事のメインとなる原稿や、複数のペンネームで他社の雑誌にアダルトゲームのノベライスや、投稿体験談などの細かい仕事も紹介してくれる編集者の綾香は、公私共に大切なパートナーである。
もう四年間のつきあいになる。
綾香の誕生日は八月だったが、綾香の仕事が忙しく九月に入ってから夏季休暇と有給休暇を合わせて六日間の休暇を取った。
「先生、車の運転できたんですね」
「普段は電車が多いけどね」
綾香と車で五時間かけてS県のT市よりさらに山の中の雛谷村にやってきた。
普段は車の運転をしないので、山道の運転はかなりおっかなかったが、目的の旅館に到着することができた。
「帰りは私が運転しますね。先生、おつかれさまでした。ん……なんか、男の人が運転してるのは、かっこいいですね。
夏祭りの時期は観光客が来るみたいですけど、今の時期だと穴場で私たちしかいませんよ」
まるで別の時代に迷いこんでしまったような気すらしてくる。
日が暮れる前に到着できてよかった。
綾香の親類が経営する民宿があり、温泉もあると聞いている。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは上品な中年女性で民宿の女将。綾香のいとこらしい。
「先生、色っぽいからって口説いちゃだめですからね」
くすっと笑って綾香が囁く。民宿の女将というより、老舗旅館の女将のような風情がある。
「お世話になります」
「綾香ちゃんからうかがっております。辺鄙なところですが、ごゆっくりなさってください」
部屋は和風で「ここで執筆していたら文豪みたいだな」と言うと「ここまで原稿を取りに来る編集者もいないと思いますよ。携帯電話も圏外ですから」と綾香が言うと、キスしてきた。
「先生、すぐ温泉に入りますか?」
「そうしたいが、情けないが運転で疲れたな。少し眠るよ」
「お食事の準備ができたら起こしますね。私はちょっと挨拶してきます」
「あの女将さんは、君のいとこだといっていたね」
「ええ、望月香織さん。子供の頃はよく一緒に遊んでいて姉妹とまちがわれていましたけど。似てますか?」
「物静かで上品なところが似てるな」
「お世辞を言っても何もでませんよ」
綾香と香織。
名前に同じ漢字が使われている。
部屋にテレビもない。
ざふとんを枕に寝そべるとすぐに眠気が押し寄せてきて眠ってしまった。
食堂は会議室ほどの広さで、長テーブルがあり料理が並んでいる。
「えっ、智美ちゃんがこれ作ったの?」
「綾姉よりたぶん料理なら負けないよ」
厨房から綾香と一緒にエプロン姿の若い女性が現れて挨拶する。
「作家さんなんでしょ。すごいですね」
「若いのに料理長っていうのもすごいよ」
「あたしは、ずっとこの村にいるから。仕事も限られてるから、そんなにすごくないですよ」
智美を見ていると、娘の静香もちょうと近い年齢だと思い少し胸が痛む。
妻の雅美は区役所勤めを辞めてしばらくすると娘を連れて実家に帰ってしまった。
雅美の実家は九州で離れていて、毎月養育費を払っているだけで妻や娘にも会ってはいない。
料理は山菜の天ぷらや川魚料理、味噌汁は眠気がさめるほどうまかった。
「先生、おいしいでしょ」
「たしかに。君がどこの料理でも、まあまあって顔な理由がやっとわかった」
「おいしくないわけじゃないのよ、でも、なんかちがうなって思うの」
この村はどの家も縁者であり、子供たちは村の子として別け隔てなく育てられる。

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