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もうじき
官能リレー小説 - 人妻/熟女

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もうじき 25

巫女の恵美をマンガのキャラクターにしたような黒い和服の少女と背景に羽を広げたアゲハ蝶のイラストを指さして「これです」と言うと、松浦深雪からすっと笑顔が消えて、しばらく黙ってそのイラストを見つめていた。
深雪はさらに「他にはどれが気になりましたか?」と言うのでページをめくり、咲き乱れる彼岸花ばかりの野原の中にいる、白い着物の目を閉じた少女のイラストを指さした。
深雪は少し震えた小声で「もしかして、まだありますか?」と言う。
そこで、今度は少女ではなく書物を膝に置いた洋館の一室にいる女性のイラストを指さした。
松浦深雪はひどく青ざめていた。
「どうかしましたか。
あの、ひどく顔色が悪いですけど」
唇が震えていた。
「ああ、すいません」
智美がコップに水を入れてきて松浦深雪に手渡すと、一気に飲み干した。
そして、ふぅとため息のような深い息を吐く。


「他のやつは自分のマンガのキャラクターだったり、小説の挿絵やキャラクターデザインをしたアニメ作品のイラストなんですけどね。
先生が選んだやつは少しちがうんですよ」
松浦深雪は幼い頃から何度もみている悪夢がある。それを描いとみたものだけをこちらが選んだので、ひどく驚いたのだった。
翌日の朝、松浦深雪は智美からスニーカーをかりて二人で山奥の滝に向かった。
「ええっ、もうそろそろ来る頃だと思ったので、お堂で待っていた?」
「はい」
巫女の恵美は禊を終えて、神社に帰らずにお堂で二人を待っていたらしい。
画集を巫女の恵美に見せた。
深雪は巫女の恵美をじっと見つめていた。夢のことは気になるが、それよりも見惚れているようだった。たしかに初めて会ったときは自分も見惚れてしまった。巫女の恵美はかなりの美貌で、五十歳だと深雪が知ったらどんな顔をするのか見てみたくなった。
「どんな夢か、言い当ててみましょうか?」
巫女の恵美が目を細めて、微笑した。
「黒い着物の少女は桔梗姫と呼ばれていたのではありませんか。
白い着物の少女は人身御供に捧げられた。
最後の女性は書物を撫で、呪いの言葉を吐いた。
ちがいますか?」
「そうです。とてもおそろしい夢です」
桔梗姫。平将門を裏切ったという愛妾の名。
巫女の恵美はこちらが何を考えたか、すぐにわかったようだった。
「松浦深雪さん、あなたの夢でみた三人は全員、イザナミの娘たちです。
……おそらく何か縁があるのでしょう」
霊媒師を長年続けていると、相談者があれこれ説明しなくても、いろいろなことがわかってしまうことがあるそうである。
「おそらく夢の情景の意味がわかっても、因果がある限り夢は何度も見続けるでしょう。それでも知りたいと思いますか?」
巫女の恵美は松浦深雪に穏やかな口調で言った。
「知りたいです。巫女様、教えて下さい」
「ではあなたは神社にお泊まりなさい。先生は民宿に戻ってこのことを二人に伝えて下さい」
「わかりました」
民宿に戻って話すと香織は「そうですか」と驚いたりはせずに言っただけだった。
残念がっていたのは智美だった。
神社にはこの地域の歴史を代々の巫女が記した古文書があるそうである。


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