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もうじき
官能リレー小説 - 人妻/熟女

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もうじき 12

名前など知らなくてもいい。
ただこの一瞬、同じように生きてここにいると確かめ合うように、快感を分かち合いたい。
雑踏で痴漢をした男は若い女もそんな期待をしているとは気づいていない。
若い女は、水の女。欲情の情炎に火照らされて、酒など飲まずとも期待に酔っている。男は尻を撫でた。予感や期待が妄想ではなくまぎれもなく現実だと教えた。撫でられた尻にまだ手が触れた感触が残っているような気がして、黙って歩いているが、本当はその場で泣きたいほどのせつなさも感じている。
裏路地を抜けて、道路は舗装はされているが、畑やまばらに立ち並ぶ住宅が月明かりに照らされ、花火の音やたまに通る車の音が聞こえ、通りすぎるライトの明かりがやけにまぶしく感じる。
駅前の祭りの喧騒から離れ、この時期は咲いていないが春には綺麗な花を咲かす桜の木も植えられているが、錆びたブランコがわずかな夜風に揺れて音を立てる公園を若い女は歩いていた。
まだ花火が上がり、遠い観光地の市街地から来た者たちもまだ駅前にいる時間のせいか、穴場だと思い集まってきた男女が木陰や茂みの裏、公園のそばに停車中の車内で発情期の獣のように交わっているかと若い女は思ったが、まだ誰もいないようだった。
人と接するのに慣れた者や欲情の捌け口ぐらいにしか思わない者は、若い女に声をかけてくるが、そっと雑踏の中で密かに尻を撫でた男が、さらに近づいてくるとき躊躇できないようにするにはどうしたらいいか。
若い女は振りかえり顔を見つめるのも、こちらも見つめられるので恥ずかしいが、尻を撫でた男からさらに求めてもらうためにできることはないか考えながら歩いていたのだった。
若い女が薄暗い公園の塗りの剥がれたベンチに腰を下ろしても、痴漢をした男は若い女の隣にきて腰を下ろしたりはしない。
公園を抜けて、しばらく歩いたところにあるバス停がそばにあるアパートの一室に若い女は一人暮らしをしながら、隣町の工場まで電車とバスを使って働きに行くという毎日を続けていた。
若い女は痴漢をした男が見失わないようにゆっくりと歩いて、アパートの階段の途中で立ち止まり、うつむいて待っていた。
そこでようやく男は若い女が自分を待っていたのだと確信して、階段の下から若い女を見上げた。
若い女が見上げている男を、ようやくわずかに見つめて、すぐに目をそらした。しかし、階段の途中で動かない。男は一歩ずつ、喉がからからに渇くほど緊張して、同時に胸を高鳴らせたまま、白いうなじの若い女のそばまで来て、震える指先で尻のふくらみをそっと撫でた。
「ひっ、ふぁっ」
若い女は顔を紅潮させ耳まで色づかせて、自分で口を手をあて、声をおさえて目を閉じて、小刻みに震えているのだった。
男は若い女のその姿にぞくっとした。
混雑した電車の中で痴漢をした時の女の反応とも、風俗で働く女の反応ともちがう。たしかに自分の手で触れたことで快感を感じている。
そして、男の愛撫を恥じらいながら受け入れようとしている。
痴漢をした男は若い女の欲情を感じた気がして、階段を一歩下がった。
「待ってください」
若い女は小さな声で目に涙をためながら言った。
男は彼女の暮らす部屋に招かれた。
若い女の部屋のリビングのテーブルの前で男は正座していた。
女の部屋はかすかに甘い匂いと、テーブルの上の化粧品の匂いが混ざった匂いがする。
隣の襖に仕切られ閉じられた寝室のほうで若い女が浴衣から部屋着に着替えをしているらしい。

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