PiPi's World 投稿小説

もうじき
官能リレー小説 - 人妻/熟女

の最初へ
 9
 11
の最後へ

もうじき 11

香織はそれを聞いてうなずいた。
「この土地の女たちに魅了された男たちは非業の死をとげる。だから、昔から村人たちは山に近づかなかったそうです」
巫女の恵美は綾香の父親、智美の父親の話を聞かせていいかと二人に言った。
二人がうなずくと、巫女の恵美は一度目を閉じて、深く息を吐き出してから二人の男たちのことを静かに語り始めた。

第三章 イザナミの娘たち


夏祭りになると山車が町に転がされてくる。夏祭りの時だけは各地から人が集まってくる。
花火が上がり、着物姿の男女が手をつないで歩きながらそれを見上げている。
宿泊施設はさほど多くなく、町はずれの寂れたラブホテルさえも満室になる。
事前に祭りが行われる山のふもとの小さな町では泊まれないと、観光地として有名な古い寺や遺跡跡がある市街方面の旅館に宿泊して、電車などで訪れて夜がふける前に祭りの雰囲気を堪能して電車があるうちに帰る者たちもいる。
町の居酒屋は、露店のように店先にテーブルを出したり、焼き鳥を焼いてビールとセットで売りさばく。露店も通りの左右にずらりと並んでいるが、ゆっくり立ち止まると人の流れに押されそうになる。
ほとんどの店が開店しているかいないかわからず、まるで、すたれた町を映画のセットのように再現したかのような山のふもとの町の景色なのだが、祭りの間だけは活気に溢れている。
この混雑した中で、若い女の尻を撫でた痴漢がいた。だが、騒ぐでもなく、ゆっくりと歩きつづけている若い女の色白のうなじが赤らんでいるのに露店の明かりで痴漢の男が気がついた。
若い女が酒でも飲んで酔っているのかと思い、連れがいないかと見渡してみたがいないらしい。痴漢の男はしばらく浴衣姿の若い女のうなじを見ながら、すぐ後ろについていった。
これがきっかけである。
美しいうなじや歩くたびに揺れる尻のあたりをチラチラと見ながら、さわるタイミングを待ちながら、声をかけるでもなく男は歩いた。
露店が立ち並ぶ通りから裏路地に若い女が歩いて行くと、痴漢の男も何も考えずについていった。裏路地でも人数は減った。
だが、もし若い女に叫ばれて、周囲の連中に気づかれたら逃げ場がない。
すぐに触れるのはつまらない。
痴漢の男は風俗業で働く女性で欲求を解消しようとしてみたことがあった。
痴漢の男は気がついていない。
目の前を歩いている若い女が尻を撫でられた一瞬で、もう動悸は高鳴り、何をするのか、これから自分はどうなるのだろう、不安と期待と、男の欲情に自分の欲情を重ね合い身をゆだねる背徳的な悦びすら感じていることを。
男の見つめている視線を意識するほど、欲情の蕩ける熱さのようなものや、凍りつかせるように自分がただ牝だと嫌でも教えられている気がすることを。
雑踏のざわめきで聞こえないはずの息づかいさえ感じるような気がすることを。
夏祭り、盆踊り、起源は男女が求愛の歌を掛け合う習俗の歌垣や念仏踊りと考えられているが、明治の頃までは風紀の乱れを理由に何度も禁止令が出ている。男女が入り混ざって騒ぎ、雑魚寝をする出会いの場。男女が見初め合い、肌を合わせる特別な時間。
その頃となんら変わらぬ興奮した雰囲気も小さな町の祭りの中に、活気とにぎわいの中で、まるで血のように流れている。
もう関係も立場も、どうあるべきなのか、気持ちの在り方と行動がどうあるべきかわかりきっていて、相手の体に触れても、心が壊れそうなほどの興奮もそれ以上の欲情も、心が蕩け合う至福の時もない。それがわかってしまった男は痴漢として歪んだ行動をしているという背徳の疼きと胸の高鳴りが抑えきれない。

SNSでこの小説を紹介

人妻/熟女の他のリレー小説

こちらから小説を探す