白鷺邸のメイド達 6
メイドは陶酔の表情で、僕の白い髪を指でなぞり、その片方の手で淫靡に愛撫する。
「だからこそ、私達は貴方様をより一層、更なる情愛と熱情を持って愛することを決めたのです。
一切の汚れがつかないように。
もし私の右手が貴方様を汚すようならば、私は自分の右手を折りましょう。
左手が穢すならば左手を切り落としましょう。
そして貴方様を汚すものがない綺麗な体で貴方様の寵愛をいただきたいのです」
その瞳は灼熱の溶岩のような感情が渦巻いていた。
僕は、ふふーんと笑いながら言った。
「・・・・・どうしようもないほど狂ってるね」
「それが白鷺の女です」
「嫌味だよ」
「誉め言葉です。少なくとも私にとっては・・・」
「チッ」
舌打ちして愛撫を続けるメイドの手を強く払い、僕は部屋の扉に近づき、音も無く開いていくのを見る。
扉の外でメイド達二人が扉を開き、長い廊下にはメイド達が一斉に並び、頭を下げていた。
「おはようございます、旦那様」
「はいはい、おはようございます」
一斉に頭を下げたメイド達の中を歩いていく。
その途中で黒髪のメイドを見つけたが・・・・違う。別人だ。
「どうしました?」
「別に」
馬鹿馬鹿しいほどの長い廊下を渡り終えて、またメイド達が空ける扉を潜る。
大きく開けた空間。
何人ものメイドたちが、部屋の中央にあるバカみたいに大きなテーブルのそばで僕の到着を待っていた。
テーブルの上にはいくつもの料理があたたかな湯気を立ち上らせている。
「・・・あのさぁ。いつも言ってるけど、僕1人のためにこんなに料理作らないでよ。
つーか、何で朝メシ食うのにこんな仰々しくする必要があるのさ?」
僕がうんざりした様子でいつもの苦言を呈する。
そして返ってくるのはこれまたいつもどおりの答え。
「ご主人様は白鷺家の時期後当主でありますれば、このくらい当然のことでございます。
ご主人様こそ白鷺家のご当主として、そろそろ自覚のほうをお持ちくださいませ」
僕はため息を1つついて、今日も話は平行線であることを悟る。
そしてそれ以上の不毛な会話を切り上げて1人、黙々と食事を始めた。
僕の名前は白鷺白(びゃく)。白鷺家時期当主ってことになっている。
しかし僕はこんなイカれた家を継ぐ気なんてまったくない。
いつか父親のように外へ出て、自由に気ままに暮らしてみたいと思っている。