オタク女子に囲われました 9
可愛い笑顔だ。
うん、もっと笑って欲しい。
「何か困ったことがあったら相談に乗るからな」
「うん」
そう告げて俺は真白ちゃんの部屋を後にする。改めて、管理人として住人みんなを笑顔にするのが俺の使命だと感じるのだった。
「あの…貴方が新しい管理人さんですか?」
夕暮れ時、廊下掃除のさなかに、見覚えのない女性に声をかけられた。
すらっとした綺麗な人。でもちょっとやつれたような、そんな感じ。元の髪の色素が薄いのか、ちょっとブラウンなストレートヘアをシンプルにポニーテールにした、あまり化粧っけの無い人。化粧したらもっとぴしっと決まりそうだしやつれた感じも隠せそうだけど、ということは。
「もしかして、平野さんですか?叔父から個々の管理を引き継ぎました、谷川彰人です」
「はい、挨拶が遅くなり申し訳ありません。平野理美です。」
やはり。
かなりの美人さんでありながら、どことなく残念なところを感じるのはそのお仕事の大変さを物語っている。アニメ制作会社…実情はよく知らないけど、激務なのだろう。
「萌花さんや李衣菜ちゃんから話は聞いてました…もっと早く挨拶に…」
「いえいえ、お仕事もあるでしょうからあまり無理なさらずに。今日はお休みだったんですか?」
「はい。前日が徹夜作業だったので、お昼過ぎまで寝てて…」
これもやはり…
午前中部屋を訪れようとした時に鍵がかかっていたのはまさに思った通りだった。
「お身体に気をつけて、休めるときは休んでください」
「ありがとうございます」
「お仕事は大変そうですけど、楽しいことも…」
「はい!とても楽しくてやりがいもあるので」
大変そうだけど、その顔はとてもいいものだったから、これからも頑張って欲しいものだ。
その夜、今日はもう寝ようかな、と思っていた時のこと。
「管理人さん、夜遅くにすみません」
「ああ美奈ちゃん…別に構わないよ。入っていいよ」
「お邪魔しますっ」
女子大生グラドルの美奈ちゃんが管理人室に入ってきた。
確か今日は撮影のお仕事だって言ってたな。
「遅くまでお疲れ様だね」
「ありがとうございます。とっても楽しい仕事でした」
「それならよかった」
大変だけど充実してるのはその顔を見ればわかる。
「で、そんな中こんな時間に、どうしたの?」