オタク女子に囲われました 8
部屋の中は意外と片付いておりそこかしこに何かが散乱してるとかいうことは全くない。
ヘッドホンからはものすごい音漏れ。どんだけ大ボリュームでやってるんだよ。そりゃこっちの出す音に気が付かないはずだ。
それにしても、彼女の城、ともいうべき居住スペースには驚かされた。
まさにゲームをやるためにできた空間。大画面のテレビもどうやって用意したのか、ゲームもリアリティがすごいし、それをプレイする彼女のテクもまたすごい。次々に襲い掛かる敵を一瞬のうちにバッタバッタと倒していく。俺だったらモノの数分でゲームオーバーだ。分も持つだろうか。
しばらく俺は彼女―真白ちゃんのゲームプレイに見とれていた。
経つこと30分。
その間、真白ちゃんがプレイするキャラクターは時々ダメージを食らうことはあったがゲームオーバーなんかはすることなく見事にクリアした。
「ふう」
小さく息つく横顔。年相応で可愛らしい。
「ん」
脇のテーブルに置かれたマグカップを手に取った真白ちゃんが、こちらにようやく気付いた。
「や、やあ」
背中を冷や汗が垂れる。
真白ちゃんは表情一つ変えない。
「不法侵入」
「君だって全然気づかなかったじゃないか。もうちょっとセキュリティはしっかりしたほうがいい」
「冗談。よろしく、管理人さん」
ニヒルに微笑んだ真白ちゃん。
美少女。でもあり、短髪でボーイッシュなところもあるので見ようによってはイケメン、にも見えなくもない。
「お、おう」
つーかなんだ、俺のこと知ってたのか?
「俺のこと、誰かから聞いてたのか」
「うん」
ゲームをいったん中断し脇のテーブルに置かれたスポーツドリンクをグイっと一口飲む真白ちゃん。
「真白ちゃんは、学校とかって行ってない…」
「学校………」
真白ちゃんの表情が曇る。一転して悲しそうな、寂しそうな表情に映る。
聞くべきではなかったかもしれない。
きっと何か辛いことがあって自分の殻に閉じこもり、失意のまま親元を離れた、なんてこともあるのだろうか。
そこでゲームっていう、自分が輝ける舞台を見つけることができて今に至る…真白ちゃんはそんな人生だったのだろう。
「気にするな」
「……うん」
真白ちゃんの肩をポンと叩き、耳元でごめんな、と囁いた。
「管理人とはうまくやれそうな気がする」
「そうか」
叔父さんだっていい人だけど、そう言ってもらえたら嬉しい。
「管理人、ゲームとかやる?」
「まあ今までいろいろやっては来たけど、最近はあんまり」
「機会があったら一緒にやろ」
「俺はそんなに上手くないからな」
「大丈夫。誰かと好きなことを一緒にやれるってのが、幸せなんだから」