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ハーレムなんかクソくらえ
官能リレー小説 - ハーレム

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ハーレムなんかクソくらえ 21

「あ、あああっ……」
俺の姿を見た美恵子は虚ろな目のまま声を上げて泣き始めた。ごみや洗濯物が散らかった部屋の真ん中で美恵子は座り込んでいた。座り込んだまま、泣いていた。
手にはスマホを持って。
ひどくやつれて。
俺がいない間に、美恵子に何があったのか。
美恵子の座り込んでいるそばのテーブルの上には、俺の見たことのない錠剤やカプセルがたくさん散らかったまま置かれてあった。
心の不安を落ち着かせるために薬に頼ったのか。
美恵子の左手首と腕に真っ白な包帯が巻かれているのが、痛々しい。
リストカットでもしたのだろうか。
子供の頃に入院したときに看護婦に憧れ、看護婦になる夢を叶えるためにキャバクラ嬢までやりながら苦労してもがんばっていた美恵子。
無理な飲酒で体を壊して衰弱していた俺を見捨てず介護してくれていた美恵子。
看護婦になったので、かつて優しくしてもらった看護婦のように患者に優しく接する看護婦を目指すと張り切っていた美恵子。
それが、今、目の前にいるのは心のバランスを崩して理性を保てない状態の壊れた美恵子。
虜になったまま電話をかけ続けることだけは壊れても続けていた美恵子。
俺が無視し続けていたのは美恵子の心のSOSだったのだろうか。
飲み薬の他にペン型の注射器があった。
「あ、ああ、あああっ」
美恵子は顔を両手で覆って泣き続ける。
「おい、美恵子、俺だ、わかるか?」
俺はアパートに来るまで考えていた言葉を失って、美恵子の華奢な肩をつかみ、ただ呼びかけ続けた。
もう一度、会いたい。
壊れた美恵子のその願いが叶ったとき、さらに心の破片がさらに砕け散ってしまったのかもしれない。
「きゃはははっ!」
涙を流し続けながら美恵子は今度は笑いだした。
俺の名前を呼ぶほどの理性も、会話するほどの理性も、すでに壊れてしまったらしい。
俺に出会って虜にならなければ美恵子は壊れなかったのだろうか。
俺は美恵子の手から落ちたスマホから警察に通報して、通話のままにしておいた。
「どうしましたか、どうしましたか、大丈夫ですかっ!」
通報を受けた警察の担当官の声が部屋に流れる。
俺はまだ泣きながら笑い続けている美恵子から離れて部屋を出た。
理性が戻って、追ってきてくれるのではないかと、ふりかえってみたが、玄関のドアは閉まったままだった。
警察に保護され病院で治療を受けることで壊れた美恵子は理性を取り戻せるかは、俺にはわからないが少なくても、名前を呼びかけることしかできなかった俺よりはましだと思った。

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