PiPi's World 投稿小説

ハーレムなんかクソくらえ
官能リレー小説 - ハーレム

の最初へ
 18
 20
の最後へ

ハーレムなんかクソくらえ 20

やたらと広い社員食堂は、社員たちの食事のピークが過ぎたのか、人がまばらにいる感じだった。
「和食、中華、洋食、定食、丼もの、麺類、好きなものから選べるわ。何か食べたいものは?」
メニューが多すぎて困る。
「チャーハン」
とりあえず、目についたものを言った。
「中華定食を二人分ね」
春巻、中華サラダ、チャーハン、唐揚げが二個、中華スープつき。
俺はチャーハンだけのつもりだったが、がっつり食べられる量がある。
「唐揚げはあげたてだから、美味しいけど、やけどに注意してね。いただきます」
「いただきます」
見た目はそんなに食欲旺盛な感じに見えない山崎さんだが、しっかり食べて完食した。
俺も残すのも悪い気がして食べきった。味がおいしいので食べきれた感じだ。
「おなかいっぱいになりましたか?」
「なりました」
「おいしかったですか?」
「とても、おいしかったです」
「よろしい。ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
食事を終えて、山崎さんは時計を確認した。
「仕事の続きと、このあと会議が三時半からの予定であるの。夕方六時まで待てるかしら?」
「俺は暇だから大丈夫」
「会社を誰かに案内させるけど見学する?」
「いや、いいや。六時ぐらいにまた来るよ」
「そう。じゃあ、またあとでね」
このとき、山崎さんは
「コネで入社させてくれって頼みに来たなら、見学するのを断るはずないし、でも、帰るわけじゃなくてまた来るって言うから、お金でも借りに来たのかとも考えたんだけどね」
と思っていたそうだ。
女社長の地位にある人ということはわかってはいるけれど、俺はそれよりもどうしてあの日、海で俺についてきたのか、帰りにおくってくれたのか、そんな話をしたかったのだ。
老舗旅館の美熟女未亡人後藤さんみたいに、俺の体の秘密に気づいて近づいてきたのかどうか。
そこが気になっていたのだ。
夕方六時少し前まで本社ビルを出て、パチンコ店に行く気にはなれず、何をしたかと言うと、美恵子の暮らしているアパートの部屋に行ってみた。
スマホを解約すること、昔の知り合いのように旅打ちをしていること、俺よりもいいと思う人がいたら迷わず俺とのことは忘れてくれと言っておくこと。あと「元気でな」と最後の挨拶をすること。
美恵子の生活をサポートした金を返してもらわないと、とは思わなかった。
本人の知らないうちに強制的に恋をさせられて、ずっと引きずっている被害者の美恵子に俺が慰謝料を払うとしたら、いくら払えばいいか、今でもわからない。
俺の体の秘密は隠しておく。卑怯かもしれないが。
言っても信じないだろうし、もし理解しても虜になった心を別の恋に解放するには、俺よりも強く虜にする男性に出会わなくてはならないことを知れば、心が弱ければ自暴自棄になりかねない。
秘密を知る未亡人の後藤さんみたいに、したたかに事実を受け止めて、新しい恋を半信半疑ながらも待ち続けられる女性はめずらしいと思う。

SNSでこの小説を紹介

ハーレムの他のリレー小説

こちらから小説を探す