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ハーレムなんかクソくらえ
官能リレー小説 - ハーレム

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ハーレムなんかクソくらえ 19

恭子と打っていた日々を思い出して打ちながら泣きそうになることもあった。
自分の体の秘密を知ってしまった。
まだスマホに電話をかけてくる美恵子にとっては本物の恋だが、俺からすれば偽物の恋に思えた。
老舗旅館の美人女将の後藤さんを頼れば、住み込みで働けるかもしれないが、それはセックスしまくって憔悴して死んでしまうかもしれない危険があった。
来年の桜を見るまでは絶対にくたばらない。
飲んだくれて、いつ死んでもいいと思っていた頃の俺はいなくなっていた。
貯金額は少しずつ削られていく。
泊まり歩くよりも、安い賃貸物件で家賃を払って暮らすほうが安上がりだ。
しかし住所不定、無職の俺の状況で部屋を貸してくれる不動産屋はない。
「気がむいたら連絡して」
女社長の山崎さんの声をビジネスホテルのベットの上でい思い出し、俺は名刺をながめていた。
俺はスマホを解約する前に、女社長の山崎さんに一度だけ連絡してみることにした。
スマホを解約すれば連絡できなくなる。
誰かと話がしたい。
一人で黙々と打ち続けていて、虜になっていない人と、どんな話でもいいから話をしたくなった。
誰でもいいから、キスしてしまえばいいと思うかもしれないが、体の秘密を知っているからには、犠牲者は増やしたくないと俺は考えていた。
元キャバクラ嬢の美恵子は俺の犠牲者。おたがい愛し合っていたと思っていた恭子も、犠牲者かもしれないと思うようになっていた。
翌日の午前十時、パチンコ店に行かずに駅前のカフェで、緊張しながら電話をかけてみた。
「本社ビルに来てもらってもいいですか?」
今日中なら、名前を受付に言えば会えるようにしておいてくれるらしい。
俺は電車に乗って、女社長の山崎さんの会社の本社ビルに向かった。
「ここか。ビル丸ごとひとつの会社ってすごいな」
思わずひとりごとをつぶやいてしまった。
人と話さない生活をしていると、考えたことをついひとりごとで言ってしまうことがある。
最上階の社長室の前に女性秘書に案内されてやってきた。秘書が先にノックして社長室に入り、俺が来たことを山崎さんに伝えている間、ドアの前で立って待っていた。
女性秘書がドアを開け、俺が社長室に入ると、秘書は入れちがいに頭を下げて退室した。
「連絡してこないかと思ってたけど、うれしいわ。私、今日は丸一日、本社にいる日だからちょうど良かった」
うれしい、と言っていても目は笑ってない。
俺がいきなり何の用事で来たのかを考えているのかもしれなかった。
「気がむいたから、会いに来た。忙しいなら帰るけど」
「平日で忙しくない日はないわ」
そう言ってやっと山崎さんは笑顔をみせてくれた。
「ところで、君は昼食はもう食べた?」
「食べてない」
パチプロもどきに戻って一円パチンコを打つようになってからは、稼働時間を増やすために昼食を食べない日がほとんどだった。
「社長室に来たとき、海で会った人とは似た別の人が来たかと思ったわ。少し痩せた感じもしたし、なんかね、思いつめた感じがしたの」
と山崎さんはこの日のことをあとで話してくれた。実際はとても緊張しまくっていた。
「じゃあ、何か食べましょうか。でも、あと三十分待てる?」
「あ、うん、待ってるよ」
山崎さんは返事を聞くと机の上にある書類に目を通して、判を押したり、押さないで机の端にまとめたりし始めた。

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