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ハーレムなんかクソくらえ
官能リレー小説 - ハーレム

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ハーレムなんかクソくらえ 15

恭子が俺がふらふら来るのを女の直感で察して、桜を咲かせて待っていたような気もするし、ただの偶然のような気もした。
「またな」
俺は小声で桜の木に話しかけると霊園から離れた。
行くあてのない俺は、恭子と明美が好きだった朝日が見える海をながめに行こうと思った。
そのあとのことは、何も考えられなかった。
その海辺の街で、俺は女社長の山崎さんと会った。
宿屋に到着したのは夜で、俺は予約していない飛び込み客だったが、たまたま空きがあり一泊だけ泊まれることになった。
朝早く渚まで歩いて行ける距離の、ちょっと高めの料金の旅館。老舗で温泉も有名な旅館だとは俺は知らなかった。
山崎さんは出張ついでに泊まりに来ていたのだ。
すっかり日が暮れて野宿覚悟で、受付にいた初老の男性に旅館に素泊まりでもいいので、と頼み込んでいると、着物姿の華やかな雰囲気の三十代後半ぐらいの女性が通りかかかった。
「料理は用意できませんが、温泉は夜十一時以降ならご利用いただいてかまいません」と、この旅館の女将さんは宿泊を許可してくれて、部屋に案内してくれた。
部屋は庭も見えて素敵で、普通に泊まればかなり料金が高そうに思えた。聞いてみると予約キャンセルで空き部屋になったということだった。
旅館を出てしばらく坂を下ると、コンビニや夜八時には閉まってしまうが土産などが売っている店などがあり、そこを抜けて林を抜けると海岸に出られると教えてもらった。
宿泊代をATMで引き出しに行き、コンビニ弁当を店内にあるイートインコーナーで食べた。
コンビニの店員によると、俺が駅前から山の中を歩いてきたほうの道は人があまり住んでいない過疎化した地域だった。
海に近いほうが観光地らしい。春先は温泉旅館に来る客はいるが、夏場のほうが旅行者が多いという話を聞かせてもらった。
「ここの海は最高っすよ」
と品出しを終えて、俺以外の客がいないのをいいことに、大学生ぐらいの年齢のコンビニ店員が、イートインコーナーで休憩している。
この店のオーナーの息子らしい。
「じいちゃんのときまでは酒屋だったんすけど」
温泉旅館に泊まっていると言うと「ふぇ?」とおかしな声を出して驚かれた。
「すげぇっすね、あそこに泊まりに来るのは金持ちの人ばっかすよ。普通の旅行の人たちは駅前のホテルに泊まって、車はこのへんの駐車場を夏は金取って開けるんで」
時期外れに来てしまったらしい。
ただ観光客がやたらと多い時期よりも、その時の俺の気分としては、静かな雰囲気のほうがよかった。
「あ、いらっしゃいませ」
店の前に場違いな感じの高級車が停まり、運転手らしい男がトイレをかりに来て、缶コーヒーを買って車に戻っていった。
「こんな感じで、あそこに泊まる人はあんまり自分で店の中に来ねぇすよ」
と苦笑していた。
旅館から渚まで、だいたい歩いて三十分ほどらしいことがわかった。
帰り道にコンビニで見かけた高級車とすれちがう。
運転手は旅館に泊まるわけではなく、指定された日時に迎えに来るのだろう。
旅館に戻って、入浴の時間まですることもない。ただ山道を歩き疲れたので、寝そべったら眠ってしまった。
目がさめると夜中の一時すぎだった。
露天風呂に俺以外は客はいなかった。
朝日の昇る海を見るために、温泉から上がったら眠らずに朝五時ぐらいに旅館を出て、と考えながら、湯気の立ち込めている露天風呂で湯に肩までつかっていた。
少し熱めの湯だが、効能やらの説明書きは脱衣所にもなかった。
そろそろ上がろうかと思って立ち上がったときに、人が来た物音が聞こえた。
夜中に温泉に入る客もいるだろうと気にせずに歩き出して、この旅館の女将さんとはちあわせた。

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