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ハーレムなんかクソくらえ
官能リレー小説 - ハーレム

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ハーレムなんかクソくらえ 14

その旅行から一年後、明美が交通事故で、恭子が癌で死んだ。明美には身内がいたが、恭子には身内はいなかった。両親が自殺して亡くなったあと祖母と暮らしていた。風俗嬢をしている頃に親がわりで育ててくれた祖母は他界した。
恭子を看取り、小さな葬儀を済ませて、墓を購入して埋葬した。
俺はこの世界に一人だけ取り残されたような気持ちになった。
俺は飲めない酒をやけになりながら飲み、パチンコもやめて、生きた屍のように、ぐでぐでの日々をすごしていた。
酔ったついでに悪のりしてキスをした俺をキャバクラ嬢は、俺を部屋に連れて帰り、介抱した。
そのキャバクラ嬢は翌年には看護婦になっていた。
まだ見習いで給料も安く、キャバクラでアルバイトをしていたというわけだ。
俺は飲み歩いて、恭子とすごしたアパートには帰らず家賃滞納で宿なしになっていた。
それでもまだ貯金は残っていて、飲み尽くすか死ぬかぐらいのことを考えていた。
そのままそのキャバクラ嬢の暮らすアパートに転がり込んだ。キャバクラ嬢は安い病院の寮に暮らすか迷っていたが、俺がアパートの家賃を払うことにしたので、看護実習生として、アルバイトは辞めて二人で暮らした。
高柳美恵子は、胃腸が衰弱するほど飲んだ俺を介抱しながら、必死に働いていた。
俺の精子が妊娠させることができないことがわかったのは、美恵子と暮らしていた頃だった。
どうして俺が飲んだくれて宿なしになっていたかは美恵子は聞かなかった。
「結婚してくれなくてもいいけど、子供はほしい」と言っていた美恵子はひどく落胆した。
それでも俺に「ずっと一緒にいてよ」と美恵子が言うのを聞くと、恭子のことを思い出して胸の奥が痛かった。
どうして俺に美恵子が惚れたのか。
その時はまだわからなかった。
金が尽きたら愛想をつかされて、また一人になるだけだ、と考えていた。
働かずに貯金を崩して使うばかりだったので、三年もすると、そろそろ底が見え始めた。
「あと半年で、ここの家賃を俺は払えなくなる。だから、出て行こうと思う。体も酒をやめて、かなり元気になったから」
「家賃も生活費も全部、私が払う。なんで出て行くなんて言うの!」
普段は大声を出さない美恵子が泣きながら叫んだ。
「いや、無理だろう。看護婦が給料やボーナスがいい仕事でも。でも美恵子だけなら、もう、一人で暮らしていける」
「やだぁ、出ていかないで」
「ダメだ。俺と別れたほうがいい」
俺は一度だけ会った旅打ちのパチプロの師匠のことを思い出していた。パチプロとして自分がそばにいたら未熟なままの恭子のことを思うがゆえに、あえて恭子の前から姿を消した男のことを。
キャバクラ嬢も、看護婦も、とても強いストレスを抱える仕事だ。
そのまま、財布ひとつで美恵子の部屋から飛び出してしまった。
半年はパチプロもどきに戻って暮らすか、と恭子が死んでからは行っていなかったパチンコ店をめざして、電車に乗った。
恭子と暮らしていたアパートも、パチンコ店も無くなって街の雰囲気は変わっていた。
そうか、変わらないものはないか。
俺は行くあてをなくして、とりあえず、恭子の墓に行った。
恭子本人の希望で、墓石がある感じではなく共同で埋葬されていて、位牌が建物の中にあるだけ。初めにまとまった金額を払えば、その後の毎年の管理費は不要。
「春になるとね、ここの桜の木、すっごくきれいなんだよ。死んだらみれるかわからないけど、桜が咲いたら、あたしのこと、思い出してほしいな」
桜が咲いていた。
「昨日、咲きはじめたんですが、今日はもうこんなに咲いて」
霊園を掃除していたお年寄りのお坊さんが桜を見上げていた俺に話しかけてきた。

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