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ハーレムなんかクソくらえ
官能リレー小説 - ハーレム

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ハーレムなんかクソくらえ 12

北河遥が困ったような表情でこちらを見つめて黙りこんでしまったので、俺はしかたなく、舞台になっていた街に暮らしていたことがあることを話した。
「そこで俺は恋をしていたんだ」
「ああ、それで思い出しちゃってたんですね」
北河遥は納得したようにうなずいて、珈琲を一口飲んだ。
「まあ、今は街も変わって、まったくちがう感じになってるけど」
「子供の頃に遊んだ公園とか、通ってた中学校とか少子化のせいかなくなっちゃったり、廃校になって壊されちゃったとき、二十歳のときでしたけど、なんか悲しくなって夕方に泣きそうになりながら、歩いたことがあります」
「うん」
「きっと映画でそのなくなっちゃったところが撮影で使われてたら、私もいろんなことを思い出しちゃうと思います」
あと三十年ぐらいして、映画館やこのファミレスとか、仕事場のビルが映画の舞台に使われてたら、今のことを鮮明に思い出すかどうか。
「おたがい歳をとりましたね、とか言って」
北河遥が笑顔になったので、つられて笑った。
ファミレスを出て、俺はマンガ喫茶に行くと北河遥に言った。
「むかしは夜、帰れない時間までぶらついているとよくマンガ喫茶に泊まったんだ。今はネットカフェか」
「私は飲み歩いて、ファミレスで始発待ちでした。マンガ喫茶って行ったことないですね」
「マンガ本がたくさんある。あと、パソコンで映画をみたり。でも、深夜料金は安い」
「私、マンガも読みますよ。高いんじゃなくて?」
「六時間パックとかあるんだよ。昼間は一時間いくらとかなんだけど」
北河遥とマンガ喫茶に行くことになった。
「これ、なつかしい!」
本棚から北河遥がマンガ本を十冊ほど抱えているので、運ぶのを手伝った。
こんなはしゃいだ声を北河遥が出すとは会社の連中は想像できるだろうか。
個人用ブースは「仕事場っぽい感じみたい」と北河遥が言うので、靴を脱いで横になれる広めのマットルームにした。
「八時間定額パックだから、朝八時すぎたら料金が加算されるから、スマホの目覚ましを七時半に合わせておく」
「カラオケルームみたいに延長しますかって連絡はないんですね」
「そうなんだよ。寝過ごして昼とかになったら深夜料金パックにした意味がなくなる」
「徹夜するわけじゃないんですか?」
俺はごろんと仰向けに寝そべってみせた。
「眠くなったら寝てもいいっていうね」
「これを読み終わるまで私は寝ません」
「と思ってるうちに、眠くなって目覚ましをかけないで気がついたら寝てるのがやばい」
「なるほど」
「というわけで、俺は少しだけ寝る」
「えっ?」
「仮眠してスッキリしてから、マンガを読み始めるのも作戦だっ」
「朝までぐっすりですね」
北河遥にクスクスと笑われながら目を閉じた。
恭子にも「はいはい、朝までおやすみなさい」とよく笑われたのを思い出しながら。

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