ダメ男再生学園 10
津野さんがドアを閉める。
ため息をひとつついて改めて荷物整理に取り組んだ。
ダンボールの中にはあまり女子には見て欲しくないだろうモノが本で数冊、DVDでも何本かあって、あとは持ち込んだノートPC、スマホにも…
これは1人で整理しないとな。
ただ、以前の寮生活に比べたら全然、今の方が良いに決まってる。
個室でゆっくりゆったりできるし、何よりみんなが優しい。
ナースものが多い、俺のDVD。
パッケージを見ていると理沙さん、それに西さんや沖さんや愛美さんや津野さんがナース服を着ている姿を思い浮かべてしまう。
やばっ、似合い過ぎてる。
想像すると気恥しくて、誰かに見られてしまう前にと慌てて片付けた。
コンコン
えっ……!
「ねえ、三野瀬君、手伝って欲しいことがあるんだけど、いいかな?」
理沙さんだ。
「えっ、ええ、なんでしょう?」
ズボンのベルトを緩めていた俺は、ベルトを締め直して扉を開けた。
エプロン姿の理沙さん。
「キッチンに来てくれる?」
「え、あ、はい」
俺は理沙さんについて階段を降りてキッチンに入った。
いろいろある。調理器具から材料から。二口のコンロが両方ふさがっている。
「三野瀬君、この瓶、開けてくれない?」
「ああ、いいですよ」
茶色の瓶の蓋を開けて……んー、かなり硬い。なんとか開いたけど、年期入ってそうだし、何だろう。
「ありがとう」
「男手が必要だったら何でも言ってください」
キッチンにいい匂いが漂う。
「いい匂いですね」
理沙さんは湯気を立てる鍋を指す。
「ビーフシチュー煮込んでるの。三野瀬君歓迎のために今晩はごちそうだよ。楽しみにしてて」
「ありがとうございます」
さっきの案内は、短い時間で終わったからあんまり質問とかできなかった。この機会に少しは聞いてみよう。
「あの、ここって、もしかして俺…いえ、私…」
「俺、でいいよ」
「はい。俺しか、男子はいないんですか?」
「そう。私がここに来てからは、初めての男子かな」