ダメ男再生学園 32
それって…
言いかけたところで、俺はためらった。
「相手は3人。もしかしたらもっと多かったかもしれない。その時はもう何も考えられなかったから…痛くて、つらくて、壊れてしまいそうで。殺されてしまうんじゃないかとも思った。そんなひどいことをされて、気を失って、気が付いた時には病院のベッドで寝ていた。でもよかった。生きてたんだって」
浅木さんの肩が震えていた。
「警察に言おうとした。でも、止められた。学校は、学校の名誉を守ることしか考えてなかった…そんなところに、戻りたくなかった」
「そうだよね…」
そう口にしたが、気安くそういっていいのか分からなかった。
「しばらく、誰にも会いたくなかった…それで、その次に、知ってる人のいないような、遠くへ行こうとおもった。ほんとは、次に高校行くのなら、女子高がいいかな、って思って、遠くの女子高探した。でも、お母さんが、勧めてくれたのが、ここ」
ということは、浅木さんも地元の人ではないってことか。
それにしても、命の危機すら感じた嫌な出来事を経験して、なんとか立ち直ろうとして選んだのがこの学校…女子校と聞いていたなら…
「なんか………ごめん」
「どうして君が謝るの?君は何もしてないし、私は君のこと、むしろ好きになりたいの…」
俺はまず浅木さんの言葉の前半部分だけが頭に入り、そこに答え始めた。
「いや、女子校って思って来たなら、俺とかいて申し訳なかった、って思って…」
「そういう意味じゃなくて、お母さん、私が女子校行って男性にもう一度近づけるようになるのが遅れるより、女子校に近い共学校のこの学校を勧めてくれたんだ」
「そうなんだ」
そこは納得した。で、改めて、その後に聞こえた言葉、好きになりたい、って…
「実験台、って言うと君に失礼になるかもしれない」
「はい…?」
「私が、男の子を、いい風に意識できるようになれるための」
浅木さんが俺の額を手で押さえる。
そこに、浅木さんの額がくっつく。近い。マジで近い。
そして……すげえ可愛い。
「頑張ろう、一緒に」
「は、はい」