俺がお嬢様ハーレムの主になれた理由 38
爽やかにそう言う姿は絵になるんだが、この勝負の条件って…
そう思っていると藤崎さんもプールから上がってくる。
笑顔が微塵も感じられない、神妙な表情だ。
「いきなり勝負を持ちかけてごめんなさいね」
「いえ、楽しかったです」
「さっきの話…本気で受け止めないでね」
「保奈美…」
藍ちゃんは間に立って2人を見つめていた。
「厚沢さん。私は、私よりずっと以前から…藍ちゃんと強い絆で結ばれているあなたや幸田さん、岩井さんがうらやましかった。私なんかとてもかなわないと思っていたわ」
藤崎さんは恵梨ちゃんに向かって話す。
「だけど、藍ちゃんが水泳部をやめて…あなたを追ってテニス部に入った時、あなたに激しく嫉妬したわ」
「藤崎さん…そんなに藍さんのこと…大好きなんですね!」
恵梨ちゃんが穏やかな口調で言った。
「保奈美、恵梨ちゃんは悪くないよ。私が恵梨ちゃんたちと一緒にいたいと思って…」
藍ちゃんが藤崎さんに言う。
「わかってる。厚沢さんとは1度…全力で勝負してみたかったの。これで吹っ切れたわ。ありがとう…厚沢さん」
「“恵梨”でいいです。私も“保奈美さん”と呼ばせてもらいますから」
恵梨ちゃんは笑顔でそう言った。
「保奈美さん。藍さんだけでなく、私たちとも仲よくなりませんか?」
恵梨ちゃんが笑顔で言った。
「ええ。よろしくね…恵梨ちゃん」
保奈美ちゃんも笑顔で応えた。
恵梨ちゃん、藍ちゃん、保奈美ちゃんの3人は、手を前に出して重ね合わせた。
よかった。
俺はホッと胸をなでおろした。
ドラマなんかでよくある女同士のドロドロした関係にはならずに済んで本当によかった。
…まあ、高校生でそれはさすがにないとは思ったけど。
「では、先生」
「?」
その藤崎さんが俺のほうを向いて言う。
「まだお時間ありますよね?私も皆さんと、それに先生と一緒に楽しみたいなと」
「いいよ……あと俺はまだ先生じゃないんだけどね」
「さっき…噂って言ってたけど、僕のこと…どんな噂になってるの?」
俺は保奈美ちゃんに尋ねた。
「若くてカッコイイ男の先生がやって来るって聞いたんです。うちの学園ってそういう先生がいないから、みんな楽しみにしてるんです」
「そうかい!」
それを聞いて、俺はうれしくなった。
「でも、新しい先生がこんな素敵な人でよかった」
そう言って、保奈美ちゃんは俺の胸に頭を寄せた。
「優さん、一緒に泳ぎましょうよ」
真梨子ちゃんと明日香ちゃんが俺の傍に来て言った。
「よし!泳ぐとするか」
「優さんって、水泳はどうなんですか?」
恵梨ちゃんが尋ねてきた。
「まあ一通りは泳げるよ。元々体力や運動神経には自信があったし、小学生の頃はスイミングクラブに通ってて。あと、柔道も習ってたな」
水泳や柔道を習って、それが野球をやる上での体力づくりになったと思っている。野球は挫折したけど、それらの経験が体育教師を目指すことにつながったのだ。
…さて、俺もみんなと一緒にプールで楽しむとしようか。
先ほどまでのぎすぎすした空気なんてちっとも感じないくらい、藤崎さんは4人と一緒になって遊んでいる。
俺もそこに混ぜてもらい、一緒に楽しんだ。
まだ身体は鈍っていない、十分泳げる。
しかし藤崎さんはトップスイマーなんだな、速さだけでなく泳ぐフォームも綺麗だ。
あっという間にお昼の時間。
「優さん、着替えて食堂に行きますか」
「ああ、そうだね」